2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25790001
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小幡 誠司 東京大学, 新領域創成科学研究科, 助教 (90616244)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | グラフェン / STM / 分子ネットワーク / モアレ |
Research Abstract |
本年度は金属単結晶上でのモアレパターンの生成・解析および転写方法の検討を主に行った。雛形となる多様なモアレ構造を自在に作製できるようになることは、本研究の第一歩であり、最も重要な要素の一つである。Pt(111)上にベンゼンから作製した場合は、種々のモアレパターンが走査型トンネル顕微鏡 (STM) により観察され、低速電子線回折 (LEED) 測定において得られたリング状の回折パターンからもそれは確認された。さらにPtとはグラフェンとの相互作用の違う Cu 基板上に酸化グラフェン (GO) からグラフェンを生成し、様々なモアレ構造を作製した。Cu(111)基板上ではハニカム格子状のモアレパターン、Cu(100)上からはストライプ上のモアレ構造が生成した。基板の金属種や格子面を変化させることで様々な周期のモアレ構造を得ること成功した。平成26年度からはこの様々なモアレパターン上に有機物や金属を蒸着し、それらの分子ネットワークの形成を試みる。 さらに平成25年度は転写方法の開発にも取り組んだ。モアレパターン上に生成した分子ネットワークは金属基板上に生成するので、電界効果トランジスタ (FET) や触媒に応用する場合、絶縁基板等の多様な基板の上に転写することが求められる。その準備段階として、金属基板上に作製したグラフェン単体の転写法の検討を行った。具体的にはポリメチルメタクリレート(PMMA) をグラフェン/金属単結晶上に塗布し、NaOH中で電気分解を行うことで水素を界面に発生させPMMA/グラフェンを金属単結晶から剥離するという方法の最適化を行った。この手法により今回作製したグラフェンも絶縁基板として代表的なSiO2上に転写することに成功した。平成26年度にはこの手法を分子ネットワークを作製した後に適用し、様々な基板上に精密な分子ネットワークを構成することを試みる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画段階では平成26年度中に分子を実際に蒸着し、分子ネットワークの生成を行っていることになっている。しかし様々な金属基板上にグラフェンを生成する条件を検討するのに時間がかかってしまい、分子の蒸着までは行うことはできなかった。特に様々な格子面をもつ Cu 単結晶上にグラフェンを生成する条件検討に時間を要した。Cu 上でのグラフェン生成には一般的には大気圧付近での CVD 法が用いられるが、本実験で使用した STM チャンバーではそのような高圧にすることは不可能である。そこで酸化グラフェンからの超高真空での加熱による生成という新たな手法を導入した。最終的にはその手法を用いてグラフェン生成に成功したが、加熱温度などの生成条件の検討に本年度を費やすことになった。 様々なモアレパターンの生成には成功し、分子蒸着装置の準備は完了しているので26年度からは早急に分子を蒸着し分子ネットワークの形成を試みる。 しかし、当初の予定では平成26年度に行う予定だった PMMA を用いた転写法の開発は、グラフェンのみの基板ではあるが条件検討を終え転写に成功している。さらに絶縁基板上に転写し、伝導度および移動度の測定にも成功した。こちらの点では計画段階よりも早く進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度に多様なモアレ構造を持つグラフェン/金属界面の生成に成功した。今後はこれらに対して種々の分子・原子を蒸着し分子ネットワークの生成を試みる。蒸着するためのk-cellの準備は完了しているので、早急に実験を開始する。まずは蒸着分子による局所的な電子状態の変化をSTM/STSによって測定することから始める。分子の種類やモアレ構造の周期を変化させることで、系統的な理解を目指す。さらに周期的なグラフェンへの電子状態の変調がマクロな物性にどのような影響をあたえるのかは非常に興味深い事柄であり、25年度に確立した転写法を用いた絶縁基板への転写後に伝導測定を行う予定である。また鉄原子を含む、鉄フタロシアニン分子から作製されたカーボンアロイ触媒と呼ばれる白金代替触媒が注目を集めている。そのモデル触媒として鉄フタロシアニンをグラフェン上に周期的に配列させ触媒としての応用も検討する。 また酸素中での加熱によって生成するグラフェンナノバブル上での、分子の蒸着も試みる。モアレパターンの振幅が有機分子の成長にどのような影響を与えるのかおよびグラフェンナノバブルの持つ特異な電子状態が種々の分子と相互作用した時にどのような変化をするのかについても調べる予定である。 以上のように次年度は実際に分子を蒸着し、モアレパターン上での分子ネットワークの生成についても系統的な知見を得ることおよびそれらのネットワークがマクロな物性に及ぼす影響について検討する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度に購入予定であったサンプルホルダー(843,000 円)を従来品の改造と一部部品の購入で代用したこと。海外出張用に計上していた出張費を大学の別予算から支出していただいたので使用しなかったこと。 平成26年度は様座な分子(有機物や金属)を蒸着するので、その原材料費に多く使用する。さらに金属単結晶基板が転写法によりダメージを受けることがあるので、高価なPtやCuの単結晶基板を購入する必要がある。その他にSTM用の消耗品(探針ホルダーや傍熱ヒータ等)に使用する。 また多くの学会に参加し、成果を積極的に発表していく予定であるので旅費等にも利用する予定である。
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Research Products
(4 results)