2013 Fiscal Year Research-status Report
電子顕微鏡による極限環境に於けるアミノ酸を初めとする物質の安定性と新奇物性の解明
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25790003
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小林 慶太 大阪大学, 超高圧電子顕微鏡センター, 助教 (40556908)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ナノ制限空間 / 透過電子顕微鏡 / 走査透過電子顕微鏡 / 電子エネルギー損失分光 / カーボンナノチューブ / カーボンナノホーン / 炭化ニオブ / アラニン |
Research Abstract |
本年度において申請者は以下の研究成果を得た。 (1) 高エネルギー線照射下でのアラニンの分解機構とその旋光性の差異を明らかにする為、アラニンに対して200 kV透過電子顕微鏡(TEM)により電子線照射実験を行った。その結果、アラニンそのままを検鏡した場合L体D体いずれも極めてわずかな電子線照射量で分解しその差異を明らかにすることはできなかった。これに対してこれらのアミノ酸をイオン液体により被膜する事で分解までの電子照射量を増加させられる事を見出した。 (2) カーボンナノチューブ(CNT)内部を制限空間として、この内部における超伝導相転移に対する超伝導近接効果及びサイズ効果を明らかにすべく、これまで融点が極めて高い事からCNTへの導入が極めて難しいと考えられてきた超伝導セラミックスである炭化ニオブ(NbC)を五塩化ニオブの還元反応下にCNTを曝露することで内包した。結果としてバルクのNbCが11 Kで示す超伝導転移の測定には至らなかったが、この物質の電気抵抗の温度依存性を調べる中で、空のCNTが半導体的な導電性を示すのに対してNbCを導入したCNTが金属的な性質を示す事を明らかとした。 (3)カーボンナノ物質内部にアミノ酸等を導入しその構造等をTEM観察する為の基礎的な知見を得るために、一般的にこれら有機化合物のTEM観察においてはC60フラーレンを共有結合して目標物質の目印とすることを踏まえ、カーボンナノホーン(CNH)へのC60誘導体の導入において、その官能基が与える影響をTEM観察を通して調べた。その結果C60誘導体のCNH内部への導入されやすさはCNHとのπ-π相互作用の強さより官能基の極性による誘導体の凝集しやすさに依存する事を明らかにした。 (4)CNT内部へのガスの封入によりTEM内部の高真空下においてもCNT内部にガスを保持する事に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
カーボンナノチューブ(CNT)内部空間等を用いた物質の挙動に関する研究において、これまでCNT内部に内包、あるいは保持が極めて難しかった高融点物質や気体の内包・封入手法を確立した。これにより本年度はナノ空間における炭化ニオブの微細構造分析による特異な物性の解明に取り組むことができた。またアミノ酸等をナノ空間に導入したうえで電子顕微鏡による構造解析を行うための基礎的な知見をC60誘導体のカーボンナノホーン内部空間への導入実験を通して得る事が出来た。しかしながらこれらに対して、高エネルギー線照射下におけるアミノ酸等の挙動に関しては、イオン液体でこれを被膜する事で完全な分解に至るまでに要する電子線照射量を増すことができる知見が得られたものの、電子線照射に対してアミノ酸が予想以上にセンシティブであったため、試料のTEM内における安定保持に関する問題が解決しておらず、これによりいまだ有意な研究結果を得るに至っていない。申請者はこの点を踏まえ、平成26年度にかけてこの問題に対して重点的に検討を進めねばならないと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に確立したガスのカーボンナノチューブ(CNT)内部への保持方法に基づいてキセノンを始めとする希ガスのナノ空間における電子状態とその構造について電子エネルギー損失分光分析と電子顕微鏡(TEM)観察を併用して明らかにする。この系に関しては低温TEMホルダーを用いる事で気相から固相にかけての相転移の挙動についても明らかにする。また希ガスのみならず水蒸気をCNTに導入しTEM内で保持する事で、CNT内部空間において現れると予想されている氷の新たな強誘電体相の実験的な確認ならびにTEM観察による構造解析を行う。更に今年度進捗が滞っていた高エネルギー照射下のアミノ酸の挙動に関しても、この方法を用いてアミノ酸水溶液をCNTに導入する事でTEMによる取扱いが可能になる事も考えられる。したがってこの方法を含めて、アミノ酸結晶のTEM内部の取り扱いを可能とする方法を確立し、これの安定性の電子線エネルギー、電子線照射量及び照射率依存性、及びL 体とD 体の安定性の差異に関する知見を得る。これにより本研究の目的の一つであるパンスペルミア仮説が成立する条件・環境を見積もりこの仮説の妥当性を結論付ける。
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Research Products
(10 results)
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[Presentation] 改良鋳型法によるカーボンナノチューブ内部への炭化ニオブナノワイヤーの形成2013
Author(s)
小林慶太, 永瀬丈嗣, 保田英洋, 穴田智史, 斎藤毅, 清宮維春, 北浦良, 王青, 若森育也, 篠原久典
Organizer
日本金属学会2013年秋期(第153回)講演大会
Place of Presentation
金沢大学角間キャンパス, 金沢
Year and Date
20130917-20130919
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[Presentation] One-step synthesis of NbC nanowire within inner space of carbon nanotubes by template method2013
Author(s)
Keita Kobayashi, Satoshi Anada, Takeshi Nagase, Takeshi Saito, Masaharu Kiyomiya, Ikuya Wakamori, Ryo Kitaura, Hisanori Shinohara, Hidehiro Yasuda
Organizer
NT’13: 14th International Conference on the Science and Application of Nanotube
Place of Presentation
Aalto University, Espoo, Finland
Year and Date
20130624-20130628
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