2013 Fiscal Year Research-status Report
量子ドットセルオートマトン論理デバイスの理論的動作解析および設計
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25790009
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
徳永 健 工学院大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (30467873)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 量子ドット / セルオートマトン / 混合原子価 / 量子ダイナミクス / ルテニウム錯体 / Creutz-Taube錯体 / 密度汎関数法 |
Research Abstract |
過去の我々の研究で、2核Ru錯体(Creutz-Taube錯体)の近傍に1個の入力(1個の点電荷)を配置した系について、電子移動現象(分子内信号伝達速度、信号強度)の計算方法と解析方法をすでに提案している。平成25年度においては、これらの方法を、実験的に合成されている4核Ru金属錯体(Creuts-Taube Square)と3個の入力(6個の点電荷)の系に適用した。QCAデバイスとして多数決回路・AND回路・OR回路の3つの論理回路を想定し、回路の動作を確認するとともに、錯体中の電子移動現象を解析した。 4核Ru錯体の構造最適化を行い、3つの論理回路に対応させて全16パターンに入力電荷を配置し、電荷を変化させたときのQCAデバイスの動作を確認した。その結果、10パターンでは論理回路として理想的に動作した。一方、残る6パターンでは、デバイスとして理想的に動作しなかった。これは、分子内の分極が小さいことが原因であることが分かった。 電子移動現象の解析の結果、信号伝達はフロンティア軌道近辺の多くの軌道を経由して起こっていることが分かった。特定の軌道に限定できないのは、正方形に近い形状をしている4核Ru錯体のフロンティア軌道が擬縮退しているためである。この結果は、錯体の配位子や架橋配位子を変化させて、フロンティア軌道の分布や縮退を変化させることで、電子移動現象を容易にチューニングできる可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は、平成25年度は、他の金属・配位子・架橋配位子を有する4核錯体について計算を行い、様々な分子についての計算データから分子設計に関する知見を収集する予定であった。しかしながら、予定を変更して、配位子としてcyclen、架橋配位子としてpyrazineを有する4核Ru錯体(Creutz-Taube Square)のみを取りあげて計算を行った。この観点からは、研究は予定からやや遅れていると言える。しかしながら、この4核Ru錯体に対して、平成26年度に行う予定であった、多数決回路・AND回路・OR回路の3つのQCAデバイスを想定した16パターンの電荷を配置した計算を前倒して行うことができた。これらの論理回路としての動作を確認し、その信号伝達挙動についての詳細な解析も行った。 結果として、Creutz-Taube Squareを用いた場合には、回路としては理想的に動作しない電荷配置パターンが6つあることが分かったが、分子内の分極を増大させることが必要であるという解決方法も平成25年度の研究で明らかになった。平成26年度の研究のスタート地点として、分子内の分極を増大させるための配位子と架橋配位子の変更という方針を立てることができた。 以上のことから、全体として、研究課題の進捗状況はおおむね順調であると言える。得られた研究成果について、年度末に1件の学会発表を行い、活発な議論を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度において、1個の4核Ru錯体における電子移動現象と、それを支配する因子が明らかになった。平成26年度においては、(1)平成25年度に取り上げた系で回路として理想的に動作しなかった電荷配置パターンの改善を図るとともに、(2)4核錯体を複数組み合わせたより実用に近い論理回路を構築し、その演算性能を明らかにする。 (1)平成25年度と同様の4核Ru錯体を演算セルとして用いるが、配位子や架橋配位子を変化させて、分子内の分極が大きくなるよう改善を図る。 (2)出力セルとして演算セルの右に1分子の4核Ru錯体を加えて、計2分子を並べる。演算セルの近傍に6個の点電荷を配置した系において、デバイスの動作を確認するとともに、信号伝達挙動動作を考察する。最終的に、3つの入力をすべて錯体で置き換え、5分子を十字型にならべた論理回路を作成する。コンピュータ内の論理演算の基礎となる多数決回路・AND回路・OR回路を構築し、その論理演算シミュレーションを行う。QCAデバイスの演算速度と出力される信号強度を検証し、電界効果トランジスタなどの既存のデバイスとの性能の比較を行う。 複数個の錯体に関する計算は、九州大学の大型計算機を利用して行う。また、自作プログラムを用いた計算について、錯体2分子までは小型の計算機で行うが、5分子の論理回路については大型計算機を利用して行う。得られた結果に関して、年度途中・年度末の学会において発表するとともに、論文投稿も行う。
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Research Products
(3 results)