2013 Fiscal Year Research-status Report
スピントルク発振を用いた、高時間・高空間分解能をもつ電子スピン共鳴法の理論開発
Project/Area Number |
25790011
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
荒井 礼子 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノスピントロニクス研究センター, 産総研特別研究員 (50431755)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | スピントロニクス / スピントルク / スピントルク発振器 |
Research Abstract |
本研究の目的は、スピントルク発振器を用いたスピン状態検出の理論提案である。 初年度である本年は、並列計算機を導入し計算環境の構築を行った。その後、最も簡単なマクロスピン近似のもとで、微小磁化と双極子相互作用しているスピントルク発振器のシミュレーションプログラムの作成を行った。シミュレーションでは発振層に垂直磁化膜、固定層に面内磁化膜を想定したスピントルク発振器を仮定した。このような組成のスピントルク発振器は、発振強度が大きく線幅が小さい良好な発振特性をもつ。微小磁化は不対電子のスピン状態を想定しており、発振層の磁化と平行または反平行を始状態とした。シミュレーションの結果、微小磁化の始状態の違いによりスピントルク発振器の発振に必要な臨界電流および発振周波数が異なることが分かった。これにより、スピントルク発振器の発振状態によって微小磁化の状態を区別可能であることが示せた。また、微小磁化とスピントルク発振器の距離がある距離以下になると微小磁化の状態が反転することが分かった。 また、動的な相互作用が働かない距離を想定しスピン状態を高速に検出する方法の提案を行った。スピントルク発振器にかかる磁場の方向に応じてスピントルク発振器の発振層の平衡方向が変化することを利用するものである。スピントルクが発振層のダンピング定数を増加させる働きをし、100psのパルス磁場に対しても応答可能であることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の計画である計算環境の構築とマクロスピン近似による数値計算プログラムの作成を終え、スピントルク発振器の発振挙動を解析する準備が整った。また、微小磁化との相互作用を考慮したスピントルク発振器の発振シミュレーションを行い、発振に必要な臨界電流、発振周波数と微小磁化の方向との関係を明らかにした。一方、時間分解能に関する議論は今後の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
時間分解能に関する議論について研究を進める。シミュレーションはほぼ終了しているので理論解析を進める。また、26年度以降の計画として、複数の不対電子に対するスピントルク発振器の応答について検討することとしているので、計画通りシミュレーションと解析を実施する。これに関しては、本年度作成した数値計算プログラムを改良、発展させて実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
計画時に概算で請求していた旅費と実際の旅費に差が生じたため。 旅費または消耗品費として使用する。
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