2014 Fiscal Year Research-status Report
分子内の電荷配置を“情報”として伝播する複核フェロセン超分子デバイスの開発
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25790016
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
田原 圭志朗 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 助教 (50622297)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ビフェロセン / 水素結合 / 組織体 / 原子価間電荷移動 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、分子素子を構成する基本ユニットに適した混合原子価化合物として、ビフェロセニウム誘導体を中心に、組織化法の検討と組織体の構造・物性評価を行った。組織化部位として水素結合能を有するB(OH)2基を導入したビフェロセンジボロン酸を新規に合成し、これをビルディングブロックとした。様々な条件で再結晶し、得られた単結晶についてX線結晶構造解析を行った。溶媒フリーの結晶では、分子間で2つのボロン酸が2点の水素結合を含む8員環を形成することで1次元鎖を形成した。ピリジン含有結晶では、1次元鎖の両側の水素原子とピリジンの間で水素結合が確認された。ピリジンは1次元鎖をキャップし、鎖同士を分断するセパレーター分子と見做すことができる。THF含有結晶では、1次元鎖をTHF分子がキャップする構造の他に、4つのB(OH)2基によって形成される平面構造、およびこれが階段状に連なったネットワーク構造が見られた。1次元鎖構造をベースとして、再結晶に用いる溶媒が鎖間相互作用や距離を制御するための重要な因子となることが示唆された。 さらに、ビフェロセンジボロン酸とペンタエリスリトールを縮合させることで、環状4核錯体を得た。化学酸化によって得られた2電子酸化体のUV-vis-NIR測定を行ったところ、ビフェロセニウム種由来の原子価間電荷移動遷移吸収が見られた。詳しい解析から、2つのビフェロセニウム間で電子的な相互作用はほとんどないと結論付けられた。一方、電気化学測定およびDFT計算によって、2つのビフェロセニウム間で静電的な相互作用が働くことが示唆された。ビルディングブロック内の強い相互作用とビルディングブロック間の弱い相互作用を相乗させるための、基礎的な知見を得ることが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度使用した化合物の結晶化や単離の困難さから、予想以上に時間を割く必要があっため、当初計画より研究が遅れる部分があった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、取り扱いが容易な有機レドックス分子やウレア架橋体を基幹物質にする予定であり、研究を効率的に進めていく。また、新たな大学院生2名と協力し、研究を推進していく。
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Causes of Carryover |
予想以上に使用している化合物の結晶化や単離が困難であったため、研究の進行が一部遅れているため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の翌年度請求分に加え、適切な化合物の新たな合成・探索のため、試薬・消耗品等の購入に充てる。さらに、得られた化合物の機能評価のための物品購入に充て、研究を遂行する。
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Research Products
(7 results)