2013 Fiscal Year Research-status Report
がん早期診断のためのエクソソーム非標識カウンティングデバイス
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25790028
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
安井 隆雄 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00630584)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | エクソソーム / miRNA / がん早期診断 / 非標識カウンティングデバイス |
Research Abstract |
平成25年度は、申請者がこれまでに作製したマイクロ流路内にピラー構造体を有するデバイス(Micro Total Analysis Systems 2012, 2012, 1, 1234)を改良することで、血液からのエクソソーム抽出デバイスの開発を行った。研究開発開始以前のマイクロ流路内にピラー構造体を有するデバイスでは、直径50-100 nmのエクソソームと赤血球・白血球・血小板(大きさ約2-14 um)を分離することはできなかったが、本年度では、DNA分離用に開発したナノピラー構造体(ACS Nano, 2011, 5, 7775)やナノワイヤ構造体(ACS Nano, 2013, 7, 3029)の知見より、新規ナノデバイスを開発し、エクソソーム分離を行った。新規ナノデバイスの開発においては、エクソソームと血球細胞のサイズに応じた分離に影響を及ぼすピラー直径、ピラー間隔、ピラーの幾何学的配置について検討を行った。本デバイスにおいて一定量のエクソソーム回収を達成することに成功したが、エクソソーム回収率のさらなる向上を行うために、マイクロ流路内に直径100 nm・高さ2 umのナノワイヤ構造体を組み込んだ新規ナノワイヤデバイスの開発を行った。ナノワイヤデバイスは、マイクロ流路内に10億本程度のナノワイヤ構造体を有しており、エクソソームを静電相互作用やナノワイヤ間のナノ空間にて捕捉することが可能である。そして、本ナノワイヤデバイスを用いることで、従来法と比べ、血液中エクソソームの高効率な回収を達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は、申請者がこれまでに作製したマイクロ流路内にピラー構造体を有するデバイス(Micro Total Analysis Systems 2012, 2012, 1, 1234)にDNA分離用に開発したナノピラー構造体(ACS Nano, 2011, 5, 7775)やナノワイヤ構造体(ACS Nano, 2013, 7, 3029)の知見を加えることで、直径50-100 nmのエクソソームと赤血球・白血球・血小板(大きさ約2-14 um)を分離することに成功した。さらに、エクソソーム回収率のさらなる向上のため、マイクロ流路内に直径100 nm・高さ2 umのナノワイヤ構造体を組み込んだ新規ナノワイヤデバイスを開発することに成功した。本ナノワイヤデバイスは、マイクロ流路内に10億本程度のナノワイヤ構造体を有しており、エクソソームを静電相互作用やナノワイヤ間のナノ空間にて捕捉することが可能であり、従来法と比べ、血液中エクソソームの高効率な回収を達成した。 本ナノワイヤデバイスは血液のみならず、1 mLのエクソソーム含有液(尿・唾液・細胞上清液等)をナノワイヤ構造体に送液するだけでエクソソームを高効率に分離を行うことが可能であることも見出した。特に、尿中エクソソーム由来miRNAの解析による効果的な未知のバイオマーカー探索や低侵襲診断を行うためには、少ない溶液量から得られる情報量の多さが重要であるが、既存の手法ではエクソソーム分離及びmiRNA抽出に数Lの尿が必要であったのに対し、本デバイスでは1 mLの尿からエクソソームを高効率に分離・エクソソーム由来miRNAの高効率抽出に成功し、本デバイスの有用性を示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度はナノ空間が生み出す回折光を利用したエクソソームの非破壊・非標識カウンティングデバイスの開発を行う。申請者は、これまでにナノ空間が生み出す回折光を利用した非標識検出法を開発し、200 nmのナノ空間を用いてわずか14分子程度のDNAを非標識検出することに成功している(Anal. Chem., 2011, 83, 635(IF=6))。さらに、本非標識検出法はナノ流路に導入された物質の屈折率変化に応じた非標識検出を行っていることを実証し(Micro Total Analysis Systems 2011, 2011, 1, 647)、世界で初めてDNAの増幅過程を非標識で検出することに成功した(Micro Total Analysis Systems 2012, 2012, 1, 25)。直径100 nm程度の粒子を1分子レベルで非標識に検出するためには、粒子を導入した際の内部の屈折率変化が大きくなるように高さ150 nm、幅150 nmのナノ空間を設計・試作する予定である。エクソソーム内包miRNA量の増減の検出のための十分な感度が得られない場合は、参照流路と検出流路のナノ流路を2本作製する。それぞれの流路に参照試料としての血漿サンプル(エクソソーム無し)を、検出試料としての血漿サンプル(エクソソーム有り)を導入することにより、参照信号と検出信号を同時に測定し、微弱信号の高感度検出が可能であるかどうかを検証する。 エクソソームの高感度非標識検出後は、エクソソームに内包されるmiRNA量の増減を非標識検出し、miRNAの発現量の差による信号強度の差をデータ処理することで信号強度に応じた分布図の作成を行う。この際、内包miRNAの発現量の差による信号強度の差に有意差が見られない場合は、内部のmiRNAと相互作用する物質を導入することにより信号強度の増強を行う予定である。最終的には、正常細胞とがん細胞のエクソソーム内包miRNAを非破壊・非標識でカウンティングし、信号強度の分布の変化により、がん診断応用やがん発症機構解明・iPS細胞のがん化検出を検証する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の計画以上に研究が進展したため、当該助成金が生じた。本来であれば、デバイスは試行錯誤により作製する予定であり当初に計画した費用が必要であったが、当初の計画以上に研究が進展したため、試行錯誤の回数を少なくすることができ、チップ作製に伴う消耗品類(チップ基板、薬品等)に必要とする費用を計画よりも抑えることができた。そのことによる当該助成金が生じた。 翌年度では、研究が予想より進展しているため、臨床サンプルとなるヒト血液・尿由来エクソソームの研究を進める予定である。そのヒト血液・尿由来エクソソームの研究に必要となる試薬類(エクソソーム抽出キット、エクソソーム内包miRNA抽出試薬、蛍光試薬等)の消耗品費用として当該助成金を使用する予定である。
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[Journal Article] Christmas-tree nanowire chips for DNA separation2013
Author(s)
S. Rahong, T. Yasui, T. Yanagida, M. Kanai, K. Nagashima, A. Klamchuen, M. Gang, H. Yong, F. Zhuge, N. Kaji, Y. Baba and T. Kawai
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Journal Title
Micro Total Analysis Systems 2013
Volume: 1
Pages: 164-166
Peer Reviewed
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[Presentation] 3D Network Nanowires for DNA Separation2013
Author(s)
T. Yasui, S. Rahong, T. Yanagida, N. Kaji, M. Kanai, K. Nagashima, A.Klamchuen, M. Gang, H. Yong, F. Zhuge, T. Kawai and Y. Baba
Organizer
Lab on a Chip Asia
Place of Presentation
Singapore
Year and Date
20131113-20131113
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