2013 Fiscal Year Research-status Report
マイクロ流路デバイスを用いたセンチュウの農作物寄生メカニズムの定量的解析
Project/Area Number |
25790035
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
肥田 博隆 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60402509)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | MEMS / マイクロ流路 / 化学走性分析 / 植物寄生性センチュウ |
Research Abstract |
本研究の目的は,世界中で農作物に深刻な被害を及ぼしている植物寄生性センチュウの代表種である,サツマイモネコブセンチュウ(以下ネコブセンチュウ)の行動分析用マイクロ流路デバイスを開発し,植物寄生に関わる物質やその濃度条件を明らかにし,環境に無害な新規防除法を実現することである。今年度実施した具体的な内容を以下に示す。 【1. 化学走性分析用マイクロ流路デバイスの開発】ネコブセンチュウの化学走性分析用マイクロ流路デバイスを新たに開発した。本デバイスは光透過性が高いPDMS(Poly dimethylpolysiloxane)およびガラスを材料とすることで,微小なネコブセンチュウ(体長1mm未満)の行動を,光学顕微鏡で容易かつ詳細に観察可能とした。【2.ネコブセンチュウの流路内泳動プロトコルの確立】マイクロ流路中へのアガロースゲルの導入により,ネコブセンチュウが自由に泳動出来る環境を形成した。本手法により,直線など単純な形状のマイクロ流路において行動分析が可能となり,濃度分布などの化学環境が容易に定量化出来る見通しを得た。【3. 物質拡散による流路内濃度勾配の評価】開発したマイクロ流路デバイスに対し,蛍光物質(ローダミンB)を拡散させた際の蛍光観察より,流路内に濃度勾配が効果的に形成され,一定時間維持されることを確認した。この結果より,本デバイスによりネコブセンチュウの化学走性が効果的かつ定量的に実施できる見通しを得た。【4. 新規忌避性物質の発見】開発した分析手法により,高濃度の硝酸カリウムに対し,ネコブセンチュウが強い忌避性を示すことを新たに見出した。硝酸カリウムは環境や人体への負荷が低く,土壌に同物質を導入し植物への寄生を防ぐ新規防除法確立への重要な知見となる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書の計画に従い,本年度はサツマイモネコブセンチュウの化学走性用マイクロ流路デバイスを開発し,実証試験により新規忌避性物質およびその濃度条件を明らかにできたことから,おおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は,以下のテーマについて取り組む予定である。 (1)化学走性分析のハイスループット化 マイクロ流路をアレイ化することにより,分析効率の向上を図ると共に,流路中における化学物質の濃度分布の定量化を試みる。 (2)新規誘引性物質の探索 今年度新たに明らかにしたサツマイモネコブセンチュウの忌避性物質に加え,誘引性物質,およびその濃度条件の解明を進め,それらを組み合わせることで,行動制御による植物寄生性センチュウの新規防除法の確立に繋げる。
|