2013 Fiscal Year Research-status Report
鉄系酸化物の室温電子固体状態における電子相変化機能の実証
Project/Area Number |
25790041
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤原 宏平 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (50525855)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 酸化物エレクトロニクス / 電界効果デバイス / 抵抗変化メモリー / 酸化還元 |
Research Abstract |
遷移金属酸化物が示す電子の相変化現象を利用した革新的デバイスの創出を目指している。本研究では、層状鉄酸化物RFe2O4(Rは希土類イオン)が室温で示す電荷秩序相を対象に、高電界ストレス印加と電界効果の二つのアプローチにより、無秩序相への電界誘起相変化の実現に取り組む。本年度は、実験に必要なデバイス構造の作製と基本特性評価に注力した。具体的成果を以下に示す。1.二端子スイッチングデバイスの開発:LuFe2O4薄膜に金属電極を取り付けた面内二端子構造をフォトリソグラフィーとArミリングにより作製した。電荷秩序絶縁相にある温度において、電界ストレスの印加により電気伝導度が不連続に増加することを確認した(電流スイッチング効果)。2.他の材料系への技術展開:整備した電流スイッチング評価システムを用い、Mn系電荷秩序酸化物に対し同様の実験を行い、電荷秩序現象の理解に役立てた。3.イオン液体を用いた電界効果実験:金属に匹敵する大きなキャリア密度を有する相関電子系材料に対して有効なキャリアドーピング手法として、イオン液体などの電界質が注目を集めている。本手法の特徴は、電界質イオンがチャネル材料表面に形成する電気二重層が誘起する強電界とそれが可能にする巨大キャリアドーピング効果にある。RFe2O4に適用する前段階として、電界効果デバイスとしてノウハウの蓄積があるスピネルZnxFe3-xO4を用い、イオン液体ゲーティングの効果を調べたところ、通常の静電キャリアドーピングでは説明できない不揮発性の電気伝導変化を観測した。種々の実験から、薄膜最表面での酸化還元がその起源であることが明らかとなった。この変化は可逆かつ再現性が高く、ゲート電圧の極性を反転することで、電気伝導や磁気抵抗を繰り返し制御できることを見出した。当初想定していた電子性の電界効果とは異なるが、用途を開拓していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画前半で達成すべき、二端子スイッチングデバイスの開発と電流スイッチング効果の観測に成功している。イオン液体を用いた電界効果実験に関しても、材料系は異なるものの、ユニークな不揮発性の電界効果を見出すなど、電界による相制御を実現する上での技術・知見が順調に蓄積されている。
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Strategy for Future Research Activity |
スピネルFe酸化物において見出した不揮発性電界効果は、酸化還元を介した第三の電界効果として、RFe2O4の相制御に活用する。同時に、不揮発的な輸送特性の変化を利用したデバイス(トランジスタ・メモリーなど)への道筋を探るべく、異なる結晶構造、化学的安定性、酸素イオン導電性を持つ材料を用いて実験を行うことを検討している。
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