2014 Fiscal Year Research-status Report
熱活性領域におけるスピントルク磁化ダイナミクスの理論的研究
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25790044
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
谷口 知大 独立行政法人産業技術総合研究所, スピントロニクス研究センター, 研究員 (90635806)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | スピントロニクス / 理論 / 磁化ダイナミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は等エネルギー面上で平均化されたLandau-Lifsthiz-Gilbert(LLG)方程式に基づいて磁化反転や自励発振などの磁化ダイナミクスの理論を構築した。不揮発性磁気メモリ(Magnetic Random Access Memory: MRAM)やスピントルク発振器(Spin Torque Oscillator: STO)の実現に向けてナノスケールの強磁性体における磁化ダイナミクスの理解が必要となっている。昨年度は熱揺らぎによるランダムな運動が無視できない熱活性領域における磁化ダイナミクスの理論を構築した。LLG方程式は非線形ベクトル方程式であり、通常は解くのが極めて難しいが、熱活性領域では磁化の運動はほぼ等エネルギー面上に限られており、磁化反転は弱い摂動とみなすことができる。この特徴から、等エネルギー面上でLLG方程式を平均化することが許され、解法が著しく簡単になる。本年度はさらに、ダイナミック領域(熱揺らぎが相対的に小さい系)においても、例えばSTOのように外力(スピントルク)と摩擦(ダンピング)が釣り合っている系では磁化の運動が等エネルギー面上にほぼ限られていることに着目し、昨年度の成果をダイナミック領域まで拡張することに成功した。これにより磁化反転だけでなく、自励発振における入力電流と発振周波数、発振線幅の定量的な解析が出来るようになった。これらの成果をPhysical Review B誌等から発表し、また日本物理学会、応用物理学会においても成果発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当該研究に関して査読付き国際誌から4本の論文が発表され、また学会で研究成果発表を行うことが出来たため。
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Strategy for Future Research Activity |
新年度も研究計画に基づき磁化ダイナミクスの解析を行っていく。昨年度の研究により、本研究内容は当初予定していた強磁性多層膜の熱活性領域におけるスピントルク磁化ダイナミクスに限らず、同一系の自励発振や、強磁性/非磁性ヘテロ構造におけるスピントルク磁化ダイナミクス、またマイクロ波アシスト磁化反転の系にも応用可能であることが分かってきたので、より広い枠組みで統一的な磁化ダイナミクスの理論を創ることを目指す。また実験との比較も積極的に行っていきたい。
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Research Products
(6 results)