2014 Fiscal Year Research-status Report
無容器法を用いた高Tc・高PsのBa-Ti-O系強誘電体合成技術の開発
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25790048
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
馬込 栄輔 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (40408696)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 無容器法 / チタン酸バリウム / 強誘電体材料 / 結晶構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,無容器凝固法を用いてBa-Ti-O系強誘電体の構成イオンを酸素との共有結合性の高いイオンに置換することで結晶構造の歪みを誘起し,より高い相転移温度と高い自発分極値を有するBa-Ti-O系強誘電体の合成技術を開発することである.無容器凝固法の利点である溶融状態からの大過冷却が可能であることを利用して構成イオンを元素置換したBa-Ti-O系固溶体を合成し,その相転移温度,自発分極値,電子密度レベルでの結晶構造を決定することで化学結合の観点から構造歪みの起源を解明し,高い相転移温度と高い自発分極値を有する強誘電体材料の設計手法の確立を目指す. 本年度は,前年度に構築した無容器法の一つであるガスジェット浮遊法を用いた試料合成システムの改良を行い,より簡便で再現性の高い試料合成が行えるようになった.この試料合成システムを用いて,Ba-Ti-O系強誘電体の構成イオンを元素置換した固溶体を数種類合成し,放射光回折実験により結晶性の評価と予備的な結晶構造解析を行った.その結果,元素置換率の増加に伴って構造歪みが増加していることを見いだした.本研究の目的とする高い相転移温度と高い自発分極値を有する強誘電体材料の設計手法について新しい知見が得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は,ガスジェット浮遊法を用いた試料合成を再現性良く行うため,ガスジェットの流量調節を行うマスフローコントローラ,合成状態を観察するためのレンズ等を購入し,ガスジェット浮遊法を用いた試料合成システムの改良を行った.改良した試料合成システムで構成イオンを元素置換したBa-Ti-O系強誘電体の合成を行うことで,前年度より不純物の少ない良質な結晶合成が可能になった.合成した結晶について放射光粉末回折による結晶構造決定,相転移温度決定を行った結果,構造歪みは誘起されているが,相転移温度はほとんど変化していないことが分かった.現在,より大きな構造歪みをもつBa-Ti-O系強誘電体を合成するため,構成イオンを置換する元素を変えた結晶合成を開始している.研究計画で示した高い相転移温度と高い自発分極値を有するBa-Ti-O系強誘電体の合成の達成に至っておらず,本研究課題はやや遅れている.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に行ったガスジェット浮遊法を用いた試料合成システムの改良により,より簡便に良質な結晶の合成を行えるようになった.次年度は,このシステムを用いて,Ba-Ti-O系強誘電体の構成イオンを置換する元素を変えて結晶合成を行い,高い相転移温度と高い自発分極値を有するBa-Ti-O系強誘電体の合成を目指す.置換する元素は,酸素との共有結合性が高く,置換しやすいと予想される元素を新たに数種選定し,Ba-Ti-O系強誘電体の元素置換によって大きな構造歪みをもつ結晶の合成を行う.合成された結晶について強誘電相転移温度,自発分極等の物性測定,構造歪みと化学結合との関係を明らかにするため,高エネルギー放射光粉末回折実験による電子密度レベルでの結晶構造決定を行い,構成イオン間の化学結合状態,相転移温度,自発分極と構造歪みとを関連づけて議論する.得られた成果を国内学会や国際学会での発表を行う予定である.
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Research Products
(1 results)