2013 Fiscal Year Research-status Report
新規ワイドギャップ半導体ScNのハライド気相成長法による高品質結晶成長
Project/Area Number |
25790050
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
大島 祐一 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, その他 (70623528)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 窒化物半導体 / 熱電変換 / 磁性半導体 / 太陽電池 |
Research Abstract |
(1)成長装置の改善: 本研究では腐食性の強いScおよびその塩化物を原料として用いる。そこで、特に腐食対策に配慮したHVPE炉を用いた。しかし実際に結晶育成を行うと、想定外の部材の腐食が起こった。また、原料同士の気相反応により基板上で結晶成長が起こらなかったり、原料ノズルへのデポ堆積により成長の再現性が悪い等の不具合があった。そこで使用部材やフローチャネル構造を見直し、これらの問題の解決を図った。 (2)成長用基板の探索:ScNの成長用基板として様々な単結晶材料を試みた。そのうちサファイアr面上ではScN(100)の単結晶膜を成長することができた。 (3)成長条件の最適化:原料分圧、成長温度、リアクタ内のガスフローパターンを調節し、成長速度5um/hを達成した。これは、これまで報告されたScN単結晶膜の成長速度としては最も速い。 (4)育成結晶の評価:育成したScN膜に関し、各種特性の評価を行った。表面はいずれも鏡面を呈した。結晶性は膜厚の増大とともに劇的に改善し、厚さ約40umのScN(100)膜でX線ロッキングカーブ半値幅は300秒を下回った。また、不純物濃度は従来報告値より2桁改善し、高純度結晶が育成できたことがわかった。透過反射スペクトルの解析から、直接バンドギャップの位置は約2.06eVであった。この値は過去の報告値の中でも非常に小さく、低残留酸素濃度を裏付けている。残留キャリア濃度も従来報告値より大幅に改善し、それに伴ってキャリア移動度も増大した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験開始当初は想定外の部材腐食や気相反応による成長阻害などの問題が次々と起こり、スケジュールの大幅な遅れを生じた。しかしながら、その後比較的早い段階で良好なエピタキシャル成長が実現し、遅れを取り戻すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の取り組みにより、従来の報告に比べれば格段に高品質なScN単結晶膜が得られたものの、残留キャリア濃度の起源は未だ不明である。また、キャリア移動度のさらなる向上が可能かも興味深いポイントである。そこで、今後はさらに詳細な電気特性の解析を行うとともに、膜中の欠陥の種類、密度、分布状況の調査を進め、残留キャリアの更なる低減や移動度の向上につなげていきたい。
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