2013 Fiscal Year Research-status Report
メタマテリアル表面に励起されるプラズモンの速度制御
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25790065
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中西 俊博 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30362461)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | メタマテリアル / 表面プラズモン / 群速度 |
Research Abstract |
テラヘルツ測定系として、光ファイバー導入型光伝導アンテナを用いた時間分解分光系の開発を行なった。自由空間伝搬光を直接光伝導アンテナに照射する方法と異なり、光に対する光学系とテラヘルツに対する光学系が完全に分離されているために、アンテナの位置を移動させても光路の再調整を行なう必要がない。ただし、ファイバーを超短パルスが通過する際に受ける分散の影響をあらかじめ補正する必要がある。回折格子ペアを用いた分散補償によって1THzを優に超える帯域のテラヘルツ波を生成することができた。 空隙を元にした回路モデルの一般的導出手法を構築するために空隙の電圧・磁束を未知数とする積分方程式を微分形式を用いて定式化した。金属中の電流・電荷はWhitney捩形式で補間するのに対し、空隙中の電圧・磁束は通常の捩れのないWhitney形式で補間する。そして、積分方程式から有限個の方程式を得るためにde Rham法とGalerkin法の2つの方法で評価を行った。この結果、どちらの方法でも回路方程式が得られることが分かった。さらに、この研究を発展させ、抵抗膜を含む金属メタ表面に関してバビネの原理の拡張からアプローチした。これにより、補対構造と呼ばれるメタ表面の電磁波応答に普遍的な関係が存在することが分かった。特に、補対構造が元の構造と等しい自己補対構造においては、電磁波の反射、透過、吸収特性が周波数によらず一定になることを示した。 メタマテリアルを用いた電磁波の速度制御として電磁誘起透明化現象(EIT現象)を模擬するメタマテリアル(以下EITメタマテリアル)を考案し、電磁波の低群速度化および電磁波の保存及び再生の検証実験を行なった。その結果、マイクロ波領域での電磁波の保存再生に成功し、再生時にメタマテリアルの共鳴周波数を変化させることで再生信号の周波数を変化することにも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PEEC法の幾何学化に関しては、当初計画していた通り理論的枠組の構築から、実際の計算にいたるまで平成25年度中に行なうことができた。そして、金属と抵抗体からなる人工平面構造における透過反射および吸収に関する一般的な性質をバビネの原理の拡張から導く研究については、研究が予定より大きく進み、自己補対メタ表面における周波数無依存応答の理論の確立に至った。また、試料の作成も行い、実験的な検証も部分的に成功している。 メタ表面の局在波を測定するためのテラヘルツ全反射減衰分光系の構築は若干の遅れが生じている。これは、光ファイバー導入型光伝導アンテナを用いる方法を選択したからである。この方法により、分散の補償が必要になるが、測定の自由度を大幅に上げることが可能になった。テラヘルツ全反射減衰分光系においては、テラヘルツの入射角を変える必要があるために、光学系とテラヘルツ系を分離することは正確な測定に必要であると考えた。その一方、平成26年度から開始する予定であった、マイクロ波領域におけるフラットバンド上の表面波の時間領域測定については、予備的な実験を開始する段階にある。マイクロ波領域のメタマテリアルはプリント基板上に作成することが一般的であるが、より簡便にメタマテリアルを作成するために、銀ナノ粒子インクを充填したインクジェットプリンタを利用して金属構造を作成する方法を開発している。 電磁誘起透明化を模擬するメタマテリアルを利用した、電磁波の速度制御に関しては、電磁波の保存だけでなく、周波数変換にも成功し、大きな進展といえる。 以上を総合して、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
テラヘルツ全反射減衰分光系の構築が第一の目標である。これまでの研究により、光ファイバー導入型光伝導アンテナを用いたテラヘルツ波の発生が可能になったので、この系のもつ自由度を生かし、角度を変えながら全反射減衰分光を行う分光光学系を開発する。その分光系を用いて、透過特性における共鳴周波数と入射角の関係から、金属メタ表面上に伝搬する伝搬波の分散関係の導出を行う。 マイクロ波領域におけるフラットバンド上の表面波の時間領域測定については、インクジェットプリンタを利用して印刷した金属構造を利用することを考えている。これにより、メタ表面を精度よくかつ高速で作成することができる。測定対象としてまずは金属円板-金属棒結合メタ表面を想定している。この構造の表面プラズモンの電荷は主に金属円板上に蓄積されるので、金属円板上部に電界プローブを設置することで局所励振が可能である。この電界プローブにプラズモン共振周波数で変調されたパルス波を入力し、測定したい伝搬方向の金属円板の上部に設置した電界プローブから出力されるパルス波をオシロスコープで観測することで、その方向のパルスの速度(群速度)を求めることができる。また、単一周波数の信号を使い、位相測定も行うことで、表面プラズモンの固有モードの特定も行う。そして、金属円板-金属棒結合構造の補対構造(金属と空隙を入れ替えた構造)に関しても同様の表面波が伝搬するかどうかを検証する。補対構造では、ループ上の電流モードが結合しながら伝搬するので、磁気プローブで局所励振及び局所測定が可能であると考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
テラヘルツ波分光について、後のために自由度の高いファイバー導入型の光電導アンテナを用いたテラヘルツ発生を優先的に研究したために、全反射減衰分光法の構築は平成26年度に行なうことにした。そして、自己補対メタ表面における周波数無依存性の研究に関しては、実際の試料の作成より、電磁界シミュレーションでのメタ表面の設計を優先的に行なったので、試料の作成は予定より若干少なかった。 全反射減衰分光法の構築のためのテラヘルツ光学部品の購入に使用する。そして、残りを自己補対メタ表面における周波数無依存性の研究に関する試料の作成費用に充てる。
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Research Products
(17 results)