2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25790066
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
池田 和浩 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 助教 (70541738)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 応用光学・量子光工学 / スピンエレクトロニクス |
Research Abstract |
今年度はまず既存の分子線エピタキシー(MBE)装置を用いて、GaAs(110)上にFeTb薄膜を成長する条件を検討した。本研究では基板面に垂直な方向に磁化を有する垂直磁化膜が重要であり、これまでにFe/Tbを交互に多層化したFe/Tb多層膜、およびFeTbアモルファス膜において垂直磁化特性が報告されているが、GaAs(110)基板上へMBE成長した例はなかった。 まず、Fe/Tb多層膜(10周期)を成長し、表面保護層としてAu(5nm)を成長した。膜厚をFe:3.4nm/Tb:1.2nmとした試料に対し振動試料型磁力計(VSM)測定を行った結果、面直方向で30emu/cm3程度の残留磁化が得られた。ただし、磁化容易軸は面内方向であった。先行研究を参考にTb膜厚を固定し、Fe膜厚を変えて成長を行ったが、面直方向を磁化容易軸とする薄膜は得られなかった。X線反射率測定において、多層膜の周期性を示すデータが得られなかったことから、急峻な界面が得られておらず、界面磁気異方性が発現していないと考えられる。これは、成長時にセルからの輻射熱により基板温度が130℃と高かったため、界面混晶化が起こっている可能性がある。本研究のMBE装置には基板冷却機構がないため、高温成長においても垂直磁化特性が報告されているFeTbアモルファス合金を検討することとした。 また、垂直磁化膜の検討と並行して、強磁性電極からGaAs(110)量子井戸への電子スピン注入についても検討を行った。Fe/AlOxによるMOS構造を有するGaAs(110)基板上スピンLEDを作製し、強磁場下でEL発光の円偏光度を測定した結果、面発光レーザ(VCSEL)に用いた場合にレーザ動作に求められる1kA/cm2の高電流密度において7%程度の注入スピン偏極率が得られ、円偏光レーザ発振に適用できることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
垂直磁化膜の作製に取り組み、FeTb材料を用いた薄膜について2通りの構造のうち、特に多層膜構造について検討した。既存のMBE装置による成長においては多層膜構造は適さず、アモルファス合金が有望であることが分かった。面直方向の残留磁化も得られたが、所望の、磁化容易軸が垂直方向となる薄膜については、更なる条件出しが必要である。ただし、研究目的に向けては一定の前進が見られた。 一方で、本研究の次の目的であるスピン面発光レーザに向けては、強磁性電極から1kA/cm2程度の高電流密度でのスピン注入が必要となるため、当該条件下でのスピン注入についてFe/AlOx電極を用いて先行して取り組み、目的とする注入スピン偏極率を得ており、トータルとしておおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は引き続きFeTbアモルファス薄膜の成長条件をさらに検討し、垂直方向に磁化容易軸を有する薄膜の作製を目指す。所望の電極が得られれば、Fe/AlOx電極と同様の技術により注入スピン偏極率を評価する。順調に進んだ場合には、光パルスによる光電流によるスピン注入磁化反転の評価にもトライする。一方で、Fe/AlOx電極の評価では100K以下の低温のみであったため、(110)量子井戸が有利となる高温での評価も試みる。 また、これまでは実験的手法のみであったが、計算・解析を用いて光電流によるスピン注入磁化反転を得るために必要な条件の検討にも着手することを考えている。
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