2013 Fiscal Year Research-status Report
円錐鏡を用いた空間モード多重化通信用高次ヘリカルビームの生成
Project/Area Number |
25790068
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kochi University of Technology |
Principal Investigator |
小林 弘和 高知工科大学, 工学部, 講師 (60622446)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 光渦 / 円錐鏡 / 軸対称偏光素子 / 弱測定 |
Research Abstract |
本年度はまずドーナツ型の強度分布と中心に位相特異点を持つ光渦を偏光測定に利用する新たな提案を行ない,その実証実験を行なった.我々は時間対称な量子測定理論である「弱測定」と呼ばれる技術における測定系として光渦を利用することで,通常の測定手法(射影測定など)では直接観測することができない波動関数の実部と虚部を,光渦の位相特異点の二次元的な位置から直接的に観測できることを理論的に示した.さらにこの手法を光の偏光状態の測定に応用し,偏光の状態空間であるポアンカレ球の球面と光渦ビームの位相特異点の位置がステレオ射影というシンプルな関係で表わされることを理論的に示し,偏光の純粋状態を用いて実験的に確認した.この研究成果はPhysical Review Aの論文として出版され,注目論文(Editor's suggestion)に選ばれた.さらに上記の手法が偏光の混合状態(部分偏光状態)にも適用可能であることも実験的に示した. 円錐鏡を用いた光渦の生成に関しては,まず円錐鏡に入射する通常のガウシアンビームの直径や入射角度などの調整を行ない,より品質の高い光渦の生成を実現した.次に通常のガウシアンビームを干渉計内において円錐鏡に多重反射させて,より高次の光渦を生成する実験を行なった.円錐鏡の多重反射により生成された高次の光渦を通常のガウシアンビームと干渉させることにより,右回りと左回りの2重らせんおよび4重らせんの干渉縞を観測することに成功した.この結果から,l=+2, -2とl=+4, -4の光渦を生成することに成功したといえる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
時間対称な量子測定理論である弱測定に基づいて,中心に位相特異点を持つ光渦を用いた光の偏光状態測定の提案および実験的検証を行ない,光計測分野における光渦の新たな応用先を開拓するとともにその有用性を理論的,実験的に示すことができた.光渦を用いた応用としては多重化通信や微小物体の移動・回転を行なう光マニピュレーション,微細加工技術などが提案されているが,光計測の分野における可能性を探るうえでも重要な成果といえる.またこの実験では光渦の生成手法として,場所ごとに速軸の向きが異なる特別の1/2波長板(軸対称偏光素子あるいはq-plate)を利用した.この手法は通常のガウシアンビームから光渦への変換効率が理論的には100%に近いため,フォーク型ホログラムを用いた生成手法とともに近年注目されている生成手法である.我々はq-plateを用いてl=+1とl=-1の光渦の生成に成功しているため,この光渦を円錐鏡に入射することで反射光としてl=+3やl=-3といった奇数次の光渦の生成も可能である.すでに532nmのレーザ光を用いてl=+4とl=-4の高次の光渦ビームの生成も実験的に確認しているため,研究全体としてはおおむね順調に進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
まず円錐鏡を用いた光渦生成に関して,様々な波長に対して適用可能であることを実験的に示し,さらに高次の光渦の生成確認も行なう.通常のガウシアンビームを円錐鏡で多重反射させることにより,偶数次の高次の光渦が生成可能であることはすでに確認済みである.今後は,q-plateを用いたl=+1とl=-1の光渦生成にはすでに成功しているため,この光渦を円錐鏡で多重反射させることにより,奇数次の高次の光渦を生成する.さらに光渦を次数ごとに分離して観測する手法の研究を行なう.実験としてはサニャック型の干渉計内にビームの断面を反転させるダブプリズムを配置してその角度を変えながら干渉光の強度測定を行ない,その測定値のフーリエ変換を行なうことで,光渦の次数ごとの強度分布観測を可能とする.まず通常のガウシアンビームとq-plateにより生成した光渦を用いて上記の次数分布測定の有効性の検証を行ない,その後,円錐鏡を用いて生成された光渦の次数分布測定を行なう予定である.また,光渦を光計測と光イメージングの分野に応用する手法も並行して検討していく予定である.
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