2014 Fiscal Year Research-status Report
イオン誘起微小電荷による炭化ケイ素半導体デバイスの破壊機構解明
Project/Area Number |
25790076
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
牧野 高紘 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, 研究員 (80549668)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ショットキーバリアダイオード / シングルイベント / 炭化ケイ素 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで入射イオンがSiCショットキーダイオード(SBD)内に理論的に誘起する電荷量を越えた過剰な電荷収集を観測しており,エピタキシャル層厚とイオン飛程の関係が電荷の増幅・過剰収集を左右するパラメータであるとしていたが,実験的な実証は行えていなかった.本研究では,SiCデバイスのイオン誘起破壊メカニズムの解明に向け,n型六方晶4H-SiC SBDのエピタキシャル層厚とSBD内でのイオンの飛程の関係に注目し,イオン誘起電荷量測定を行った. 実験に用いたSBDは,二つのn型4H-SiC基板上にCVD(Chemical Vapor Deposition)法によってそれぞれ成長させた25 umと69 umのn型エピタキシャル層の上に作製した.イオンは,サイクロトロンからのKr 322 MeVを照射した.イオンのSiC中での飛程は27 umである.照射時SBDは逆バイアス状態に保たれており,カソードに収集される電荷量を測定した.加えて,印加バイアスを変えた測定を行うことで電荷収集量の印加バイアスによる推移も観察した. どちらのSBDの場合も400 V印加時には,理論値(約6 pC)を越えた過剰な電荷収集が観測されており,イオン誘起電荷が増幅されていると言える.このときの,SBD内の電界強度は,25 umと69 umどちらのエピタキシャル層においてほぼ同じであるが,収集電荷量の増幅率を比較すると,25 umのエピタキシャル層内に誘起される電荷は,69 umのエピタキシャル層内に誘起される電荷より大きく増幅されることがわかった.これは,エピタキシャル層厚とイオン飛程の関係が電荷の増幅・過剰収集を左右するパラメータであることを実験的示す結果と言える.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、SBDにおけるイオン誘起電荷量の印加電圧依存性を詳細に追跡することで、破壊過程の解明を目指していたが、エピタキシャル層厚の異なる基板を用いることで、前述の電圧依存性に加えてイオンの飛程と空乏層厚の関係を直接的に知ることを可能とした.得られた情報、結果は当初の計画を超えるものであるが、計画通りの詳細な電圧依存性を取得していないなどの点から、達成度を「おおむね順調」とした.
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Strategy for Future Research Activity |
エピタキシャル層厚の異なる基板を用いることで、前述の電圧依存性に加えてイオンの飛程と空乏層厚の関係を直接的に知ることができた.これらの情報をもとに、数値計算を用いてより詳細な物理現象の解明を進める.当初計画の通り数値計算を進めるが、実験データから、重要なパラメータを抽出できているため想定していた以上に計算効率の向上が図れる.最終的には当初の予定を超える成果が期待できる.
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Causes of Carryover |
エピタキシャル層厚の異なる基板を用いることで、当初の計画を超えた成果を効率的に排出できた.そのため、当初の計画で開発購入予定であった測定器の購入が不要になった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
測定器の購入予定分は、数値計算用ワークステーションの性能向上に充て、さらなる進展を図る. また、大きな進展を得たため、本結果を積極的に発表していきたいと考えている.
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Research Products
(2 results)