2013 Fiscal Year Research-status Report
X線光子相関分光法による1次元・2次元臨界現象の研究
Project/Area Number |
25790082
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
星野 大樹 九州大学, 先導物質化学研究所, 特任助教 (20569173)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | X線光子相関分光 / 高分子薄膜 / ダイナミクス / コヒーレントX線 |
Research Abstract |
本研究は高分子混合系の薄膜のダイナミクスをX線光子相関分光法により測定することで、低次元系での臨界現象の動的ゆらぎの観測を目指すものである。開始当初はダイナミクス測定を容易にするためにマーカー粒子として金微粒子を分散させた薄膜を用いることを試みたが、実際に高分子中に金微粒子を分散させて薄膜化し熱処理したところ、基板への偏析や凝集の傾向が観測されたため、本研究ではマーカー粒子として適さないと判断した。そこで、マーカーにもなり得る試料として、電子密度の比較的高いケイ素を含むかご型構造のシルセスキオキサンにより片末端が修飾されたポリスチレン(PS-POSS)を使用し、その薄膜の挙動を調べることを開始した。 X線光子相関分光法によるPS-POSS薄膜に対するダイナミクス測定開始直後から、X線の入射角を全反射臨界角よりも小さい0.14°程度に調整することで、薄膜表面近傍での熱ゆらぎに対応する緩和を観測することに成功していた。しかし、微小角入射型のX線光子相関分光測定では試料由来の散漫散乱が基板からの寄生散乱の影響を受け易いことから、緩和の起源が明らかではなかった。そこで、注目すべき散乱領域および試料条件の最適化を進めることで、緩和速度の定量的な評価を進め、さらに薄膜試料の厚みを~70-300 nmの幅広い範囲で変化させることにより、ダイナミクスの厚み依存性を調べた。その結果、緩和速度の厚み依存性および散乱ベクトル依存性を詳細に検証することが可能となり、観測された緩和が薄膜の表面張力波に由来することが明らかとなった。特に、ダイナミクスの厚み依存性は系の次元性とも関わる本研究の重要な要素であり、幅広い厚み範囲で定量的な議論が可能になったことは大きな意義を持つ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は電子密度の比較的高いケイ素を含むかご型構造のシルセスキオキサンにより片末端が修飾されたポリスチレン(PS-POSS)を本研究の材料として採用し、薄膜表面に生じる熱揺らぎを観測し、定量的に議論することに成功した。さらに、本課題のテーマである次元性を議論する上で重要なパラメータであるダイナミクスの薄膜厚み依存性についても、70-300nmの広い範囲で合理的なデータが得られており、今後、系統的に選択されアt試料に対して25年度に進めてきた実験手法を適用することで本研究課題の目的が達成できると考える。以上の理由から、本研究が順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
実験手法については、25年度に進めてきた手法を継続することで低次元系のダイナミクス測定は可能である。本年度は、試料の最適化を進めることで臨界現象に関する議論を深める計画である。本研究のテーマである臨界ダイナミクスを観測し、議論を進めるためには、薄膜系において臨界現象の発現が明らかな系を対象として進めることが有力な解決手段であると考える。そこで26年度は、既に薄膜系での臨界現象の発現が明らかとなっている有機溶媒中の高分子ブラシ薄膜の相分離系を扱うことを検討する。試料周辺のセルを新たに作製し、溶媒中での様々な温度条件下で測定を行うことで、低次元系の臨界現象について議論を深め、研究をまとめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究開始当初、金粒子の購入のために相当額の物品費が必要と考えていたが、金粒子の使用は予備実験でしようしたのみで、本測定では試料としてPS-POSSを使用したことで、その差額が生じたこと、また真空恒温槽等の設備備品についても既存の装置で対応したことで、当初予算よりも少ない支出で研究が進んだために、差額が発生した。 次年度は、試料を系統的に変化させての測定が中心となるため、種々の試薬の購入が必要であり、物品費の大半を占める予定である。旅費については、成果発表のための2回程度の国内学会、1回程度の国際学会参加を予定している。
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