2014 Fiscal Year Annual Research Report
X線光子相関分光法による1次元・2次元臨界現象の研究
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25790082
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
星野 大樹 独立行政法人理化学研究所, 放射光科学総合研究センター, 研究員 (20569173)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | X線光子相関分光 / 高分子薄膜 / ダイナミクス / コヒーレントX線 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、高分子薄膜における表面揺らぎをX線光子相関分光法により測定し、低次元系での揺らぎから高分子薄膜の相挙動ダイナミクスについて議論するものである。過去の研究において、高分子混合系の相挙動によってdewetingが誘起されることが知られており、dewetting現象の理解は、低次元臨界現象の理解においても重要である。本研究では、高分子中への分散によってdewetting抑制効果が報告されている、ケイ素を高密度に含むかご型構造のシルセスキオキサン(POSS)が片末端が修飾されたポリスチレン(PS-POSS)を材料として、表面揺らぎとdewettingの関係を調べた。 様々な分子量・厚みのPS薄膜およびPS-POSS薄膜表面の揺らぎをX線光子相関分光法により測定し、比較を行った。分子量の高い系では単体PS薄膜とPS-POSS薄膜の間で差は観測されなかった。これは、高分子量ではPOSSの元素比率が低く、表面揺らぎに与える影響が小さく有意な変化が観測されなかったためと考えられる。一方、POSSの比率が高くなる低分子量では、PS-POSS薄膜表面の揺らぎは単体PS薄膜よりも10倍以上遅い緩和を示した。すなわち、POSS修飾効果によって、表面の揺らぎが抑制されていることが見出された。POSSの表面への偏析によって表面に高粘度層の形成および、表面張力の低下によって表面揺らぎが抑えられていると考えられる。 PS-POSS薄膜の他に、低次元臨界現象を高分子鎖の一端が基板に固定化された高分子薄膜系の臨界現象を扱うことで低次元の臨界現象の研究に取り組んでおり、本研究で築いた基盤をもとに低次元臨界現象の研究を発展させる計画である。
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