2013 Fiscal Year Research-status Report
多孔性結晶薄膜を用いた分子イオンの配向制御に関する研究
Project/Area Number |
25790084
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
的場 史朗 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 高崎量子応用研究所 放射線高度利用施設部, 研究員 (80535782)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 量子ビーム / 放射線 / 配向分子 / 分子イオン / 加速器 |
Research Abstract |
本研究では、多孔質薄膜を用いた高速分子イオンビームの分子軸配向制御の実現を目的として、ナノメートルサイズのストレート孔内壁と透過高速分子イオンの間に生じる相互作用の解明を行う。初年度は分子イオンの配向角度測定システムを構築し、次年度は多孔質結晶自立薄膜に高速分子イオンを透過させることで分子軸配向現象の観測及び配向制御のための最適条件を明らかにする。 平成25年度は、クーロン爆発イメージング法を用いた分子イオンの配向角度測定システムの構築を行った。この測定システムでは、多孔性薄膜から出射した分子イオンを再度カーボン薄膜に入射させ、クーロン爆発による解離を誘起させる。クーロン爆発では分子構造によって解離イオンの散乱方向・エネルギーが決定されるため、カーボン薄膜の背後に設置したマイクロチャンネルプレートで解離片の二次元イメージングを行うことで、分子イオンの配向角度を求めることができる。本システムを用いて細孔の直進性・平行性が高いイオン穿孔薄膜について分子イオンの透過実験を行った。具体的には、6 MeVのC_2分子イオンを照射し透過粒子の運動エネルギーの測定を行い、透過分子イオンと穿孔カプトン膜内壁との相互作用の有無を検証した。この結果、透過したイオンは細孔内部で解離しなかったがエネルギーの損失が観測され、多孔薄膜内壁との相互作用があったことが確認できた。この相互作用による分子イオンの配向角度変化の有無、もし変化がある場合にはその制御条件を次年度に明らかにする予定である。 本実験は独立行政法人日本原子力研究開発機構高崎量子応用研究所イオン照射研究施設施設(TIARA)のイオン加速器を用いて行われた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、配向度測定システムの構築及びイオン穿孔カプトン薄膜を用いた分子イオン透過実験を行った。しかし、ゴニオメーターの故障により分子イオンの配向角度変化の測定に着手することは出来なかった。現在、ゴニオメーターの修理は完了しており、次年度早々にイオン穿孔カプトン膜を透過した分子イオンの配向角度の測定及び結晶薄膜透過実験に着手する予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
構築した分子イオンの配向角度測定システムを用いて、次年度ではイオン穿孔薄膜に加えて多孔質結晶薄膜を用いた透過実験を実施する。まずは、二原子分子イオンを用いて、結晶薄膜の細孔径・材質及び分子イオンの双極子モーメント・入射速度・回転定数(安定同位体を用いる)・分子量を変化させ、透過した分子イオンの配向角度を測定する。薄膜の細孔径・材質及び分子イオンの入射速度によってウエイク相互作用が、また、薄膜の細孔径・材質及び分子イオンの双極子モーメントによって結晶電場との相互作用が、さらには、回転定数によって分子イオンの回転のしやすさが変化することが予想されるため、これらの相互作用・現象による配向角度の変化を検証する。次に、代表的な直線分子であるC_nイオン(n=1-8)を用いて同様の測定を行い、クラスター分子イオンの配向制御の実効性を検証する。 上記の実験を通じて、配向制御に最適な結晶薄膜や分子イオンビームの条件を見出す。配向を制御した大強度イオンビームへの応用を目的として、耐放射線性や機械強度に優れた配向制御のための薄膜結晶を提案する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初、分子イオンの配向度測定に用いる検出器(マイクロチャンネルプレート)の検出効率について、外部の人間に委託し謝金を支払う予定であった。 しかし、この測定を自身で行ったため、謝金が不要になった。 謝金として計上した経費は物品費に振り分け、検出効率測定を効率化する実験機器を購入する予定である。
|
Research Products
(3 results)