2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25790096
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
相島 健助 東京大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (40609658)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 数値計算手法 |
Outline of Annual Research Achievements |
データマイニング等,現代の情報処理分野において,特異値分解や固有値分解の数値計算アルゴリズムの重要性は言を俟たないであろう.現在,これらの行列分解の標準的数値計算アルゴリズムは,線形計算の世界標準ライブラリLAPACKにも実装され幅広く利用されている.申請者は,これまでこのLAPACKに実装されているQR法やdqds法の理論的基礎付けを与えるとともにその改良を行い,高速な実装を与えることに成功している.本研究では,これらのアルゴリズムの高速化を図るとともに,これまでに得られた高速化に関する知見を大規模疎行列向けの射影法や固有ベクトル,特異ベクトルの数値計算にも応用することで,高速かつ高精度な行列分解アルゴリズムを目指すものである.
本年度の研究実績としては,固有値問題において重要な射影法およびヤコビ法などに対して収束性解析を行った.大域的収束の証明や誤差解析に有用な定理を与えている.特に,Lanczos法という最も古典的かつ有名な射影法に対して,現代的な技術であるリスタート戦略を導入したバージョンに対して大域低収束を証明したことは特筆に値する.もともと既存の定理では証明に技術的な仮定が必要であったが,本研究では仮定を除外し自然な収束定理を与えている.さらに,この結果はLanczos法以外の現代的な射影法に対する解析にも援用でき,一般的な射影空間に対する収束のための条件を明らかにしたことは広い波及効果を期待できる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初は密行列用のソルバーの開発を目指していたが,大規模疎行列向けの射影法に対する有用な知見が得られたためその方面で大きな進展があったと言える.
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Strategy for Future Research Activity |
大規模疎行列向けの解法を主に研究の対象とするが,それらは内部で密行列用のソルバーを用いるため,両方の性質を調査し最適な組み合わせについて考察する.これによりアルゴリズム中のパラメータは増えるが実験的考察も加味して最適化を目指す.
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Causes of Carryover |
数学解析において当初の予定とは異なる分野での成果が生まれたため,その方面での国際学会発表を次年度に行うため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ベルギーで行われる国際会議ILASでの発表.
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