2013 Fiscal Year Research-status Report
渋滞列における発進波の数理的解明から渋滞解消の実践へ
Project/Area Number |
25790099
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
友枝 明保 明治大学, 公私立大学の部局等, 講師 (70551026)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 渋滞学 / 待ち行列 / 反応遅れ / 発進波 / 圧縮性流体 / セルオートマトン |
Research Abstract |
渋滞解消のキーワードは「slow-in fast-out」である.例えば,車の列を考えた場合,車列の後方に加わる車の台数を前方から抜けて行く台数よりも少なくすることができれば,渋滞車列を短くすることができる. 今年度は,人が行列から抜け出していく際に観察される発進波(人が動き出す反応の連鎖の波)のダイナミクスに注目し,どのように制御すればfast-outが実現できるかについて次のような実験を行った.まず,被験者には数理モデルに呼応して設計された一次元歩行路上に並んでもらい,行列を形成する.次に,後方の人に気付かれないように先頭の人の自由なタイミングで前方へ歩き出してもらう.先頭の人には,あらかじめ電子メトロノームとイヤホンを渡しており,そのイヤホンから聞こえるリズムに合わせて歩行速度を調整してもらう.歩行速度の調整がリズムを用いて可能であることは予備実験で確認済みであり,「速い・普通・遅い」の3パターンの歩行速度を設定した.実験では,上空からのビデオ撮影を行い,動画データから得られた歩行軌跡を解析することにより,先頭の歩行速度とfast-outとの関係について検証した. 実験の解析結果は次の通りである.直感的には,先頭の移動速度が速ければ速いほど,渋滞列を早く解消できる,つまりfast-outが実現できるように思えるが,歩行速度が速い場合よりも,普通の方が行列全体としては速く移動する,という興味深い結果が得られた.動画解析により,これは先頭の歩行速度が速すぎると行列が分断してしまいスムーズな移動が実現できていないことが明らかとなり,行列が分断しない最適な歩行速度があることを示唆している. 本研究成果は,渋滞現象に関する査読付きの有名な国際会議の一つである"Traffic and Granular Flow'13"において,その結果の重要性が評価され,口頭発表により報告した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り実験を遂行できているため,おおむね順調に進展していると言える. 実験の解析にあたっては,PeTrackという群衆運動を解析することに特化した無償ソフトウェアを利用した.本ソフトウェアの利用は申請時には考慮されていなかったものであるが,本研究における動画データ解析手法を調査している際に発見し,実験動画の解析に極めて適していることがわかった.本ソフトウェアを利用することで,解析時間の大幅な短縮につながった.さらに,"Traffic and Granular Flow'13"の主催者の一人が,このソフトウェアを開発している研究者であった.このつながりから,本実験研究について,共同研究という形で進めていく提案もソフトウェア開発者側から受けており,今後の実験動画の解析の効率化,およびソフトウェアの補正によるデータの精密化という面では非常に大きな申し出をいただくことができた.
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Strategy for Future Research Activity |
まず,人の実験結果を数理的に示すことを行う.特に流体力学とのアナロジーを用いた解析を行う予定である. 実験結果より最適速度の存在の可能性が示唆されたが,3条件の比較でしかなく,数理モデルを用いることで,より定量的に最適速度の存在を示す. 次に,条件数を増やして人の実験を引き続き行うと同時に,車へと発展させた実験も行う予定である.人の歩行と車の走行で大きく異なる点は,車両の慣性の効果(スロースタート効果)である.この違いは,一度停止した状態から再び動き出す場合,車は人に比べて動き出しが鈍いことを意味し,発進波の伝播速度が遅くなることが予想される. 車の実験の場合は,トライアル数が極めて少なくなってしまうため,まず人が行列から抜け出していくダイナミクスを記述する数理モデルにスロースタート効果を導入した改良版数理モデルの解析から,車の渋滞列における発進波の伝播速度と密度の関係を明らかにする.さらに,トラベルタイムを密度と移動速度の関数として定式化することで数理の側面から結果の見通しを立て,実際の実験によってモデル解析の結果を実証する予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成26年度に車両を使った実験を想定しており,その準備のために機器備品を購入する予定であったが,所属研究機関に変更があったため,購入手続きが間に合わず残高が発生した. 機器備品については,実験が滞りなく遂行できるよう購入する予定である.
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