2015 Fiscal Year Research-status Report
頂点作用素代数のモジュラー不変性とその表現論への応用に関する研究
Project/Area Number |
25800003
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
有家 雄介 筑波大学, 数理物質系, 助教 (50583770)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 頂点作用素代数 / モジュラー不変性 / モジュラー形式 / モジュラー微分方程式 / ヴィラソロ代数 |
Outline of Annual Research Achievements |
27年度は,頂点作用素代数であって,既約表現の指標の張る空間がある種の微分方程式(モジュラー微分方程式とよばれる)の解空間と一致するようなものの分類を,微分方程式の階数が低い場合に行った.ただし微分方程式に関する十分な情報を得るために,頂点作用素代数としては最も基本的であるヴィラソロ極小模型の満たす性質(低い斉次空間の次元)を仮定して分類を行った.結果として,階数が4の場合には現れる頂点作用素代数は二種類のヴィラソロ極小模型と,二種類の極小模型の拡大であることがわかった.また,これを証明する過程でヴィラソロ極小模型の既約表現一つによる単純カレント拡大の既約表現の指標の張る空間はあるモジュラー微分方程式の解空間と一致することを証明した.また,このような場合に現れる微分方程式は,極小模型の中心電荷(でいくつかの条件を満たすもの)を持つような頂点作用素代数を特徴付けることも証明した.この結果は,プレプリントとしてまとめ,現在投稿中である.
階数が3階の場合には対応する頂点作用素代数が存在するかどうか分からない微分方程式が現れ,さらにムーンシャイン加群に対応する微分方程式が現れたため,対応する頂点作用素代数の分類までにはいたらなかったが,頂点作用素代数の中心電荷の候補をすべてリストアップし,さらに対応する微分方程式の解をすべて与えた.こちらもプレプリントとしてまとめ現在投稿中である.
また,上記の結果について国内外の研究集会で講演を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
頂点作用素代数のモジュラー不変性の応用先として,モジュラー微分方程式を用いた頂点作用素代数の分類という優先すべき課題が見つかり,この研究を主に行ったため.
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Strategy for Future Research Activity |
28年度は,今年度までに得られた知見をもとに研究計画どおり,頂点作用素超代数の捩れ加群上の擬跡関数およびフュージョン積の研究を完成させる.
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は,第一にほかに優先すべき課題がみつかり,研究計画を若干修正した影響で27年度は新しい研究図書を必要としなかったことが挙げられる.第二の理由はこれまで使用していたパソコンにより数式処理などが十分に行える範囲の研究であったので,27年度予定していたパソコンの購入を見送ったことである.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
28年度に行う研究はモジュラー形式,リー代数,数理物理学にまたがる内容なので,この研究に必要な研究図書の購入に充てる.さらに,より複雑な数式を扱う必要があると予想されるので,より高速な数式処理ができるように新しいパソコンを購入する.
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