2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25800007
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
鈴木 正俊 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (30534052)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 数論 / ゼータ関数 / 正準系 / ハミルトニアン / 零点分布 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は, 加法的分解と正値性という観点から, 現代数論の重要課題のひとつである数論的ゼータ関数の解析的性質を探ることであった. これに関して, 昨年度は, ゼータ関数のある種の近似から良い指数多項式の族が得られることを背景に, 適当な性質を満たす指数多項式の加法的分解から生ずる正準系のハミルトニアンについて研究を進め, ハミルトニアンを具体的に構成するための新たな手法を得た.
そこで本年度は, 主要な数論的ゼータ関数は適当な正則化の下で, 指数多項式の類似物であるフーリエ変換型の整関数として捉えられる事を踏まえて, フーリエ変換型の整関数の加法的分解から生ずる正準系とそのハミルトニアンに関する研究を推進した. この中で, 本課題で扱われるような正準系は, 特殊な型の双曲型偏微分方程式系, 非線形波動方程式および Gelfand-Levitan-Marchenko型の積分方程式などと関連付けられる事が分かった. 加えて, ある種の群作用に関して不変な関数空間の性質がゼータ積分の境界項の解析的性質と関係している事も分かった. このような新たな関連性の発見は, 偏微分方程式論や積分方程式論における既存の結果や手法をゼータ関数の解析的性質の研究に応用する為の新たな方針を示唆しているばかりか, 偏微分方程式/積分方程式論に新たな問題意識を提供しているという意味でも重要だと考えられる.
一方, フーリエ変換型の整関数から生ずる正準系のハミルトニアンを, 特に代数群の極大放物部分群から得られるゼータ関数に対して考察する事を通じて, その様なゼータ関数およびリーマン・ゼータ関数の零点分布に関する結果が得られた. この内の一つは,近年注目されているゼータ関数の理論とランダム行列理論の関連について, 既存の結果にはない接点を提供するものであり, その意味で意義深いものと考えられる.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の実施計画における本年度の目標は, 昨年度に得られた成果を元に, 本研究課題と周辺関連分野との新たな接点を探ることにより, ゼータ関数の加法的分解と正値性に関する理解を深めることであった. これに対して, 本年度には研究実績の概要で述べたような, 偏微分方程式論との関係, ゼータ積分の境界項との関係, 代数群のゼータ関数との関係, ランダム行列理論との関係など, 本研究課題を推進するにあたって有用な知見が幾つも得られた. 特に, ランダム行列理論との関係は, 次年度に予定していた研究実施計画に含まれるものであり, それについていち早く成果が得られた事は, 本課題の研究が順調に進展していることの傍証であると考えられる.
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は, 数論的ゼータ関数の加法的分解と関連する正準系のハミルトニアンの具体的構成法に関連した研究を, 研究実施計画とこれまでに得られた成果に基づいて, 引き続き推進する. これと共に, 本研究課題を推進する中で新たに得られた知見を参考にして, 関数空間論, 偏微分方程式論, 積分方程式論, ランダム行列理論といった関連諸分野の専門家とも討議を重ね, ゼータ関数の加法的分解と正値性に対する理論の深化と, 新たな成果の獲得を目指す. これを行うに当たり, 国内外の研究集会での講演および研究打合わせのための旅費(60万), 関連分野の書籍購入のための費用(20万)を前年度に引き続き計上する.
|
Remarks |
研究代表者の研究成果等に関するwebページ
|
Research Products
(8 results)