2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25800007
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
鈴木 正俊 東京工業大学, 大学院理工学研究科, 准教授 (30534052)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 数論 / ゼータ関数 / 正準系 / ハミルトニアン / 零点分布 |
Outline of Annual Research Achievements |
数論的ゼータ関数の解析的性質を加法的分解と正値性という新たな観点から探る, という本研究課題の目的に対して, 昨年度は,数論的ゼータ関数の多くが, 適当な正規化のもとで, フーリエ変換型の整関数として捉えられるという事実を踏まえて,ある種のフーリエ変換型の整関数の加法的分解から生ずるべき正準系と, その系のハミルトニアンに関する研究を推進した.このようなハミルトニアンを具体的に記述する問題は, スペクトル逆問題の一種でもあり,特殊な型の(偏)微分方程式や積分方程式などと関連付けられる事が昨年度までの研究で分かっていた.
本年度は, 上述したような事柄に基づいて, フーリエ変換型の整関数から生ずるべき正準系のハミルトニアンの研究を昨年度・一昨年度の成果を適宜応用・援用しつつ更に推し進める事を行った. その成果として,求めるべき正準系のハミルトニアンを, ある種のコンパクトな積分作用素の族を用いて具体的に記述する手法が確立された. このような手法は,一般には解く事が困難な, ある種のスペクトル逆問題に対する構成的解法をも与えており, その意味で, 本課題の目的や数論的な意義を別にしても, それ自身で重要かつ興味深い結果である.
いっぽう, この成果を用いることにより, 一般のフーリエ変換型の整関数から生ずるべき正準系と数論的ゼータ関数から生ずるべき正準系の違いを, ハミルトニアンの具体的な表示式を通して比較検討することができるようになり, 数論的ゼータ関数から生ずるべき正準系のより詳しい研究が可能になった. このことは最終年度である来年度の研究に対して極めて重要な役割を果たすものと考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目標は, 研究計画に従って得られた具体的結果や知見を元に, 数論的ゼータ関数の解析的性質を研究するための新たな手法や方法論を打ち立てる事であった.
これに対して, 本年度にはこれまでの研究の成果の一つとして, 研究実績の概要で述べたような,ゼータ関数論の枠組みとは独立した所においても意義が認められるような結果が得られた. このような既存の理論の枠組みに収まらないような成果の獲得は, まさにこの課題の目標の一部を成すものであり, 本課題の研究が順調に進展していることの傍証であると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度では,数論的ゼータ関数の加法的分解と正値性に関するこれまでの成果, 特に数論的ゼータ関数から生ずるべき正準系のハミルトニアンの具体的構成法に関する成果,を数論的ゼータ関数の解析的性質に関する未解決の諸問題, 特に零点分布, に対して応用することを試みる. これと共に,本研究課題を推進する中で新たに得られた知見に関して,関数空間論,微分方程式論,積分方程式論,ランダム行列理論といった国内外の関連分野の専門家と討議を重ね,ゼータ関数の加法的分解と正値性に対する理論の深化と,新たな成果の獲得を目指す.これを行うにあたり,国内外の研究集会での講演および研究打ち合わせのための旅費(60万),関連分野の書籍購入のための費用(20万)を前年度に引き続き計上する.
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Remarks |
研究代表者の研究成果等に関するwebページ
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Research Products
(8 results)