2015 Fiscal Year Research-status Report
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25800022
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
中岡 宏行 鹿児島大学, 理工学域理学系, 准教授 (90568677)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | biset関手 / Mackey関手 / 丹原関手 / 三角圏 / ねじれ対 / ルコルマン |
Outline of Annual Research Achievements |
1.有限群に付随する代数系の、制限・推移・共役に関する振る舞いを記述するものはMackey関手と呼ばれている。より構造を持つものとして、Serge Bouc教授によりbiset関手の概念が定義された。Biset関手は、有限群を対象とし射がbisetを用いて定義される圏からの、ある種の加法関手として定義される。通常のMackey関手論において、Mackey関手の構造に加えさらに乗法的推移を持つものは丹原関手と呼ばれるが、biset関手にも乗法的な構造射を持つものが存在する。 当研究では、biset関手が2-圏上のMackey関手として解釈できることを示し、biset関手の持つ「丹原性」を記述するための基盤を与えた。さらに、近年注目されている概念であるderivatorと関連付けることに成功した。
2.三角圏上のホモロジカルな構造に関わる操作として、(1) t-構造のハート, (2) 変異対による変異, (3) ルコルマンによる(t-構造などの)貼りあわせ, などが知られている。これらは、t-構造, クラスター傾部分圏, 余t-構造の三つを同時に一般化する概念であるねじれ対と以下の様に密接に関係する。 (1) 一般に、ねじれ対に対しハートと呼ばれるアーベル圏が得られる。(2) 変異対により、ねじれ対を「変異」させることで、新たなねじれ対が得られる。(3) 三角圏のルコルマンを用いて、ねじれ対を貼り合わせることができる。 当研究では、ねじれ対のペアとして定義される「双ねじれ対」を用いて、ハートやルコルマンなど関連する上記操作について調べた。(1)に関しては双ねじれ対のハートが同値となるための条件を与えた。(2),(3)については、ねじれ対に対する「変異対による変異」と「ルコルマンによる貼り合わせ」の同時一般化に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
論文“A Mackey-functor theoretic interpretation of biset functors”はAdvances in Mathematicsに掲載された。他に、“Partial Tambara structure on the Burnside biset functor, induced from a derivator-like system of adjoint triplets”、“Equivalence of hearts of twin cotorsion pairs on triangulated categories”、“Biset functors as module Mackey functors, and its relation to derivators"という3編のマニュスクリプトが国際誌に受理されている。プレプリントについても “A simultaneous generalization of mutation and recollement on a triangulated category”および“Several adjoint constructions for biset functors via Mackey-functorial interpretation”の2点をarxivに投稿した。これらの論文・プレプリントで公表した結果について、計9件の口頭発表を行った。 有限群上のbiset関手の持つ丹原性について、2-圏を用いたMackey関手的な解釈の基礎を与え、部分的な丹原性の記述を行った。当初は予期していなかったderivatorとの関連を発見するなどの進展があった。三角圏上のねじれ対に関連する構造については、「変異」および「ルコルマン」を同時に一般化する上での双ねじれ対の重要性が明らかになったと言える。 上記の様に、本研究課題での論文執筆、口頭発表についておおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
1.有限群上のbiset関手のもつ丹原性の記述について:現在までに得られている「丹原性」の記述のうち、最も多くのoperationを含むことが出来たのは、“Partial Tambara structure on the Burnside biset functor, induced from a derivator-like system of adjoint triplets”で導入した「部分丹原性」である。これは、期待される6つの操作「restriction, induction, inflation, deflation, invariants, multiplicative transfer」のうち、deflationを除いた5つの操作を記述したものと思うことが出来る。一方で、位相幾何学の研究者により、近年「power operation」を用いた丹原性の記述について述べられている。今後、これら両者の関係をより詳細に調べたい。Burnside関手およびその亜種に加え、表現環に関連する環のなすbiset関手にも、部分丹原性の様な性質が期待できる。
2.三角圏上のホモロジカルな構造について:現在までで、双ねじれ対を用いて「ルコルマン」「変異」といったねじれ対に対する操作を統一的に記述することに成功している。今後はこの記述について、silting reductionとの関係や、三角圏上のモデル構造との関連について詳しく調べたい。その際、完全圏上の余ねじれ対についての議論との比較、あるいは同時一般化についても検討し、完全圏と三角圏が共通に持つ性質を(余)ねじれ対の観点から考察して行きたい。
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Causes of Carryover |
当該年度末(2016年2月)にカナダへの出張をする際、次年度の予算から前倒し申請をお願いしました。なお、この前倒し申請につきましては、計画全体で見込まれる出張のうちの一つを次年度ではなく2016年2月に変更するという理由によるものですので、採用期間全体を通しての計画には大幅な変更を生じません。 上記前倒し申請は10万円単位で申請する必要があるため、出張費を引いた差額として10万以下の端数となる金額が生じました。これを、次年度に繰り越して使用します。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の通り、次年度に見込まれる出張予定が一つ少なくなる(2016年2月に移動する)のみですので、この点を除き当初の計画通りに使用致します。
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Research Products
(11 results)