2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25800033
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
見村 万佐人 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (10641962)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | スペクトルギャップ / coarse 幾何 / エクスパンダー族 |
Research Abstract |
本年は有限グラフのバナッハ空間をターゲットとするスペクトルギャップについて研究を進めた.このスペクトルギャップはバナッハ空間 X と指数 p(1 以上の実数)の組ごとに有限グラフから 0 以上の実数への写像を与える.固定された組 (X,p) に対して,有限グラフの無限列が (X,p)-エクスパンダー族(または (X,p)-アンダー族)とは,有限グラフの最大次数は一様有界であり,有限グラフの直径は無限大に発散し,しかも (X,p)-スペクトルギャップが一様に下から正の実数でおさえられていることをいう.標準的なエクスパンダー族は (X,p)=(R,2) のときである.一般的にスペクトルギャップの指数 p を変えたときの振る舞いの変化を理解するのは難しいが,Matousek はバナッハ空間 X が R のとき,p を変えても (R,p)-アンダー性はどれも同値であることを示した(Matousek の補外法).本研究では,この補外法を大幅に拡張し,「X が一様凸バナッハ空間と球面同値なバナッハ空間のとき,p が真に 1 より大きい実数のとき (X,p)-アンダー性は p の値に依らずどれも同値である」ことを示した.さらに,多分割等周定数を用いて定義される「n 分割エクスパンダー族」(一般の有限グラフの族では,n が上がるほど条件が弱くなる)に対し,「有限連結な頂点推移的グラフの列では,n 分割エクスパンダー族とクラスと通常の(2 分割)エクスパンダー族のクラスが同値である」ことを示した.これは,同じ結論を有限ケーリーグラフの時に予想した藤原耕二氏(京都大学)の問題の,より一般的な状況での肯定的解決を与えるものである. 酒匂宏樹氏(東海大学)との共同研究で,有限ケーリーグラフの無限列の coarse 幾何と Cayley 位相空間での marked 群の集積点を結びつけた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
個人研究において,バナッハ空間をターゲットとするエクスパンダー族の良いバナッハ空間に関する理解が進み,また,頂点推移的な有限グラフの多分割等周定数・多分割頂点踏襲定数に関しての普遍的不等式を得ることができた.共同研究においては,酒匂宏樹氏との一連の共同研究 "Group approximation in Cayley topology and coarse geometry"(part III はさらに小澤登高氏(京都大学)・鈴木悠平氏(東京大学)との共同研究)において,有限ケーリーグラフの無限列の coarse 幾何での主たる性質と Cayley 位相空間での境界に属する群の性質の間の同値を与えることができた.これは「有限ケーリーグラフの無限列としてできる距離空間」に関する研究として,当初の目的を達成したといえる.今後は,Kazhdan 定数の距離空間への一般化など,定量的なふるまいへの研究も進めていく.
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Strategy for Future Research Activity |
群とその生成集合が決まると,Kazhdan 定数と呼ばれる数量が定義される.この数量は the space of marked groups 上定義された関数と思うことができる.より一般に,井関・納谷不変量が固定した定数以下の CAT(0) 空間全体のなす族を考えるとき,それをターゲットとする "距離的 Kazhdan 定数" を導入する.The space of marked groups での極限操作は自由超フィルターを固定したときの超極限を用いて制御ができ,上の距離空間のクラス(で基点を動かしたてできる基点付き距離空間の族)はスケール極限で閉じているので,これを用いて距離的 Kazhdan 定数のふるまいを制御する. また,最近 Arzhantseva と Tessera によって,ヒルベルト空間への coarse embedding をもたなくかつエクスパンダーからの weak embedding も許さないような box space の例が作られた.酒匂氏との共同研究によって得られた,「ケーリー極限に無限個の点を出現させ,埋め込みの一様評価を破る」という手法を発展させて,彼らの結果の強化版を与えたい.
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Research Products
(10 results)