2014 Fiscal Year Research-status Report
ボトルネック構造を持つ空間上の熱核と幾何学的不等式の研究
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25800034
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
石渡 聡 山形大学, 理学部, 准教授 (70375393)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 熱核 / 連結和 / parabolicity / 中心極限定理 / 非対称ランダム・ウォーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は研究目的の研究1「ボトルネック構造を持つ空間上の熱核の長時間挙動」に則り、研究協力者の Grigoryan 教授および Cornell 大学の Saloff-Coste 教授と共同で複数のエンドのある非コンパクトリーマン多様体上の熱核の長時間挙動の研究を行い、各エンドがパラボリック(ブラウン運動が再帰的)である場合に、中心部分でのon-diagonalな熱核はエンドの中で最も増大度が大きいところに支配されるという結果を得た。これを用いて空間全体での熱核のシャープな評価を得ることができた。各エンドが非パラボリックである場合は Grigoryan, Saloff-Coste の先行研究により明らかとなっていたが、パラボリックの場合を証明したことにより、ほぼ全ての状況で熱核の詳細な挙動を明らかにすることができ、大変意義のある成果である。例えばこの結果から平面とチューブをつなげたような空間の熱核のシャープな挙動が初めて明らかとなった。また、この結果から、各エンドがパラボリックで、さらに subcritical という条件を持つならば、異なるエンドにある2点間の熱核を見ても熱核の値は小さくならない、つまりボトルネック効果がないことがわかった。この結果は現在投稿準備中である。 また、本研究課題に関連する研究として、結晶格子上の非対称ランダム・ウォークの長時間漸近挙動について東北大学の小谷教授、岡山大学の河備教授と研究を行い、非対称ランダム・ウォークの場合、通常の中心極限定理型の弱収束と推移確率のそれを対称化する推移確率の族に関する弱収束という2通りの標準的な弱収束が存在することがわかり、そのそれぞれで Donsker の不偏原理を示すことができた。これは非対称ランダム・ウォークの長時間挙動の特徴付けとして意義のある結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究により、研究目的の中で最も重要な研究1については概ね達成することができた。研究2ボトルネック構造を特徴付ける幾何学的不等式の開発および研究3.ボトルネック構造の距離空間・グラフ上への拡張については研究1の成果をもとに展開していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
研究1で得られた成果をもとに、研究2では予定通り関連する幾何学的不等式の研究を行う。また、研究3のために最適輸送理論に関する性質についても研究を行っていくつもりである。
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Research Products
(7 results)