2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25800041
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
入江 慶 京都大学, 数理解析研究所, 助教 (90645467)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | レーブ力学系 / 閉補題 / 埋込接触ホモロジー / ストリングトポロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の特筆すべき成果として,三次元接触多様体上のレーブ流に対するC∞級の閉補題を証明したことが挙げられる(論文掲載済).閉補題は力学系における重要問題であり,また一般のハミルトン力学系においてはC∞級の閉補題が成立しない(M.ヘルマンによる)ことと比較すると,驚くべき結果である.証明には三次元接触多様体に対して定義されるフレアホモロジーの一種である埋込接触ホモロジー,特にそれに付随するスペクトル不変量(一種のミニマックス値)に関する最近の進展(M.ハッチングスとその共同研究者による)を用いる.さらにこの結果を応用して,浅岡正幸氏との共同研究において,閉曲面のハミルトン微分同相写像に対してもC∞級の閉補題が成立することを証明した(論文投稿中).証明には,上で述べた三次元レーブ流に対する閉補題とともに,ハミルトン力学系の古典的な知識(KAM理論やバーコフ標準形)を用いる.
昨年度に引き続き,ストリングトポロジーに関する研究も継続した.昨年度までに,自由ループ空間のホモロジー群上のBV(バタリン・ヴィルコヴィスキー)構造を鎖複体レベルで実現することに成功していたが,これについて発表していた二編の論文を統合し改訂した(投稿中).また,この結果と余接束のフレアホモロジー上の代数構造との対応について考察を進めた.次の段階として,(1)余積などの複数の出力を持つ操作,(2)S1同変理論を扱う枠組みを作ることが必要となる.これについて考察し,いくつかの部分的な結果を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
フレアホモロジーの一種である埋込接触ホモロジーの理論を応用して,三次元レーブ流に対するC∞級の閉補題を証明した.これは,必ずしも当初に計画していたものではないが,保存力学系の研究に新しい展開をもたらす結果であると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度より継続している(鎖複体レベルの)ストリングトポロジーの研究について,目下の課題は(1)余積などの複数の出力を持つ操作,(2)S1同変理論,を扱う枠組みを作ることである.本年度にいくつかの部分結果を得たので,それをもとに論文にまとめる作業を行う予定である.また,埋込接触ホモロジーの低次元保存力学系への応用に関して,次に取り組むべき面白い問題が複数あるので,それらも検討していく予定である.
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Causes of Carryover |
今年度得られた成果の発表と関連する討議のための出張が,次年度に複数予定されているため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主に旅費に使う予定である.現時点で3件の海外出張を予定しており,そのうち2件の航空運賃を科研費から支出する予定である.
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