2015 Fiscal Year Research-status Report
測度の集中現象のLaplacianの解析学と幾何学への応用
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25800042
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
船野 敬 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (40614144)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ラプラシアンの固有値 / 凸体 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は二次元の凸領域においてノイマン条件下でラプラシアンの固有値の間の普遍不等式の研究を行った。ラプラシアンは2階の楕円型作用素の中で最も基本的なものであり、その固有値の分布の情報は解析学的に重要である。また固有値の情報は曲率、直径、測地線の分布などの情報とも密接に関係してあり、幾何学的にも重要である。今年度はラプラシアンの固有値が下から凸領域の分割とその分割を構成する集合のチーガー等周定数で評価できることを示した。この評価と前年度に得たラプラシアンの固有値と凸領域の部分集合の関係を組み合わせることにより、二次元の滑らかな境界を持つ凸領域でラプラシアンの第k固有値が上から第k-1固有値とkの対数の二乗倍で抑えられることを示した。この証明では、最適輸送理論やボルサク・ウラムの定理という代数トポロジーの定理を用いており、おそらくラプラシアンの固有値の普遍不等式の研究で初の手法を編み出したと考えられ、今後の固有値の普遍不等式の研究上、重要な位置を占めると思われる。また上記結果は私の研究の目的のひとつである「非負リッチ曲率をもつ多様体上でラプラシアンの第k固有値と第k-1固有値の比は普遍定数で上から押さえられる」という(私による)予想に近づいたと考えることができ、意義があると思われる。更に今まで知られていたほぼ全ての研究はディリクレ条件下における固有値の普遍不等式についてでありノイマン条件下で上記の普遍不等式を得たことはそれなりに意義はあると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初期の計画の手法とは違うが、新たな方法を用いてラプラシアンの固有値の普遍不等式についてアプローチすることができた。まだ完全に私の予想の解決に至っていないので、上の区分とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の証明を見直し高次元に拡張することを考えたい。証明には凸体の幾何も用いているのでその分野の専門家と積極的に議論を交わすことにより、高次元の場合の結果を得たい。特に、凸体が(k-1)-logarithmic separation不等式が成立するときに良い1-logarithmic separation不等式が成り立つ高々k-1個の凸領域に分割できるかどうか考察したい。また今年度得られた結果の対数の項を普遍定数に改良することを考えていきたい。それにはChung-Grigor'yan-Yauの不等式を改良することが必要とされ、改良の余地があるかもしれないので考察をしていきたい。更に凸領域を摂動したときにラプラシアンの固有値の安定性性質が成立するか、凸領域の連結和に関するラプラシアンの固有値の考察も行っていきたい。
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Causes of Carryover |
本年度は海外長期滞在もあって、物品費を購入することがなかったため。 また滞在中のMITで様々な一流の数学者と議論することが有益と思えたため 研究集会参加の機会が少なかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
積極的に様々な国の研究集会に参加したり研究打ち合わせを行うことで当初の研究に更なる前進と飛躍をもたらしたい。そのため出張費を次年度使用額から受け継いだ分を足して使うこととしたい。また幾何学関連分野の研究書籍を購入する。
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Research Products
(4 results)