2015 Fiscal Year Research-status Report
結晶確率モデルのハミルトン力学系による導出及びそれにおける相対効果の影響
Project/Area Number |
25800056
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
梁 松 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (60324399)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 確率微分方程式 / 強ポテンシャル / 収束 / 1次元 / 総エネルギー |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、ノンランダムな力学系を用いて結晶確率モデルを説明するという研究課題において、二つの重粒子が同じタイプでありかつ粒子の挙動に相対効果がない場合を研究するために、対応している確率微分方程式を研究した。具体的には、粒子モデルでは軽粒子の質量が0に収束する時、重粒子の挙動の極限を求めるのが目的であるので、対応している確率微分方程式モデルでは、ポテンシャル項の係数が無限大に発散する時の極限過程を求めることになる。また、二つの重粒子が同じタイプであることに対応して、ポテンシャルは負である、即ち粒子がポテンシャルの有効領域に入ってしばらくは、ポテンシャル項は吸引力を与えるモデルを考える。特に今回は、ポテンシャル関数は single-well であると仮定する。 この確率微分方程式モデルにおいて、ポテンシャル項の係数が無限大に行くために、粒子がポテンシャルの有効領域に入った瞬間、速度が無限大になってしまう。よって、粒子の総エネルギーを考えれば分かるように、摩擦の影響で、粒子が一旦ポテンシャルの有効領域に入ると、二度とこの有効領域から出ることができない。結果として、粒子がポテンシャルの有効領域に一度入ったら、ずっと速度無限大である。よって、速度そのものを考えるのではなく、粒子の位置の分布を考えることになる。 今年度は前述の確率微分方程式モデルに対し、1次元の場合を研究した。ブラウン運動の軌道の性質を用いて、ポテンシャル項の係数が無限大に行くとき、方程式の解の挙動を考査し、位置の分布の確率過程が収束することを証明した。また、予想していた通り、非常に強いポテンシャル項の影響で、極限過程はノンランダムである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定として、「相対効果のない場合について、対応している確率微分方程式の解の族を研究することにより、収束先の候補となる確率過程の一意存在性を証明する」ことを目標としていたが、この研究課題において、1次元の場合において予定通り解明することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初予定通りで研究を進める予定である。 具体的には、相対効果のない場合について、多次元の場合についても対応している確率微分方程式を考え、その解の族の性質を研究することにより、収束先の候補となる確率過程の一意性を証明し、それを実際に求める予定である。 さらに、研究課題の問題にしている相対効果のない粒子モデルに対して、重粒子が定める確率測度の族のタイト性を証明してから、対応している確率微分方程式を研究することにより得られた極限候補の確率過程に収束することを証明し、問題解決を完成する予定である。
|