2014 Fiscal Year Research-status Report
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25800073
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
伊藤 健一 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (90512509)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 数理物理 / 関数方程式論 / リーマン多様体 / スペクトル幾何 / シュレーディンガー方程式 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 多様体上のシュレーディンガー作用素に対する極限吸収原理と放射条件 前年度に得られた上記内容に関する定理の証明を新しい手法を用いて大幅に改良・簡略化し,定理の適用範囲をより自然な範囲にまで拡張できた.この分野ではよくあるように,我々の議論でもある種の交換子評価が証明の中心となるが,我々の手法では関数解析・フーリエ解析などの高度な道具を用いずに古典的な議論に徹することで2重交換子の評価を避けることができた.これにより,多様体の幾何とポテンシャルに関する滑らかさの仮定を緩めることができた.また,例えばユークリッド空間内の放物型領域の外部領域のような,錐型でない領域も扱うことができるようになった.さらに放射条件の相関数として,動径方向のリッカチ型方程式の近似解を用いることで,放射条件をより良い自然な形に改良できた. 2. 多様体上のシュレーディンガー作用素に対する定常的散乱理論 上記の1.よりやや強い仮定の下,多様体上での定常的散乱理論を構成した.より具体的には,与えられたシュレーディンガー作用素に付随したフーリエ変換を,レゾルベントの境界値の遠方での振る舞いを用いて定義し,それがある関数空間の間のユニタリ作用素であることを証明した.これは,時間に依存する散乱理論における,波動作用素の存在と完全性に対応する事実である.さらに,これまでの議論の応用として,複数のエンドを持つ多様体上において,散乱行列を各エンドに対応する成分で分割して行列表示したときに,その非対角成分が必ず単射となっていることも証明できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
前年度に得られていた結果を新しい手法を用いて大幅に拡張することができ,またやや強い仮定の下でではあるが,定常的散乱理論を構築することもできている.さらにその応用として,散乱行列のある性質も得られており,これらは研究計画に言及されている内容を大幅に超えている.よって当初の計画以上に進展していると判断される.
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Strategy for Future Research Activity |
多様体上の定常的散乱理論の全体像はすでに得られているが,年度後半に開発した新しい手法がまだ理論の後半部分には適用されておらず,この適用を早急に完成させる.さらにその後はこの内容を応用する方向で研究を進める.
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