2016 Fiscal Year Research-status Report
緩和項を持つ偏微分方程式の消散構造の研究と安定性解析への応用
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25800078
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
上田 好寛 神戸大学, 海事科学研究科, 准教授 (50534856)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 安定性解析 / 可微分性の損失 / 偏微分方程式論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、気体力学や弾性体力学に起因する非線形偏微分方程式に関する数学解析を主な目的としており、特に一般の対称双曲型方程式系や双曲-放物型方程式系、またその具体例となるEuler-Maxwell方程式系、更には、Plate方程式やTimoshenko系に代表されるCattaneoの法則を考慮した弾性体の方程式系などを取り上げ、消散構造から誘導される安定性現象について着目し研究を行っている。特に、各項が複雑に影響を及ぼしあった方程式系を考察する際に現れる「可微分性の損失」と呼ばれる現象について深く解析を行っており、様々な物理モデルに関する平衡点周りの線形安定性解析に関して、自身により統一的な結果を導くことに成功している。 本年度は特に、物理的意義のある「可微分性の損失」を明確にするために温度効果を考慮した弾性体モデルや、制約条件を付加したより複雑な物理モデルなどを考察しており、これらの解析によって得られた情報を基に、より詳細な一般論の構築も完成しつつある。また更には、これらの研究内容と関連して、プラズマ流体に基づいた粘性衝撃波の安定性に関しても考察を行っており、一定の結果が得られつつある。 他にも新たな試みとして、時間遅れを考慮した微分方程式系の安定性解析にも着手しており、それぞれの研究で培った技術を生かしながら研究を進めている。 また、上記の研究成果を携えて、学会等での研究発表も積極的に行った。本年度は研海外発表6回、招待講演1回を含む研究発表を行っている。さらに、研究集会の場では様々な意見交換がなされ、今後の研究のための大きな知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は主に、Cattaneoの法則を考慮した温度効果を考慮したPalate方程式の安定性解析に着手し、非線形安定に関する詳細な結果の導出に成功した。また、温度による影響をより複雑にしたモデルも考察しており、「可微分性の損失」の具体的な一例が得られている。更に、これらの研究を背景に、一般論の構築も順調に進んでおり現在最終調整段階である。 また、これらと並行して、時間遅れを考慮した微分方程式系の安定性解析にも着手しており、背理法を用いて固有値問題を体系的に考察することで、汎用性のある解析手法を確立している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の方針として以下を予定している。ひとつめは、これまでに解析を行った様々な物理モデルでの結果を基に、一般論の精密化について研究を行う。少なくともこれまでに2つのタイプの「可微分性の損失」が見つかっており、それらが現れる際の消散構造の数学解析の体系的手法の確立を目指す。本課題は大きな困難が予想されるが、これまでに研究してきた具体的な物理モデルでの解析結果を基に研究を遂行していく予定である。また、それに関連した内容として、消散構造の特徴付けについても研究を進めて行きたい。 ふたつめとして、時間遅れを考慮した微分方程式系の安定性解析も遂行していく。これまでに導出した手法は常微分方程式には有効であるが、偏微分方程式に対しては応用が難しい。そこで、新たな視点で、偏微分方程式にも応用できる安定性解析の理論構築を目指す。
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