2014 Fiscal Year Research-status Report
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25800079
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
前川 泰則 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (70507954)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 非圧縮性流体の数理構造 / Navier-Stokes方程式 / 渦度方程式 / 解の漸近挙動 |
Outline of Annual Research Achievements |
非圧縮性粘性流体の運動を記述するNavier-Stokes方程式の解の時間大域挙動を2次元外部領域において考察した。特に,自己相似解を含むようなスケール臨界空間に属する時間大域解が2乗可積分な擾乱に対して大域的に漸近安定となることを証明した。スケール臨界空間における2次元Navier-Stokes方程式の解の挙動を調べることは3次元以上の場合と比べて一般に困難であることが知られているが、本研究では統一的な手法でその困難を克服することに成功しており、この研究成果は2次元領域における非圧縮性粘性流体の数学的構造の解明に大きな寄与を果たすものである。また、半空間型の非有界領域における非圧縮性流体の数学的構造を考察した。例えば、2次元半空間におけるNavier-Stokes方程式に対しあるリューヴィル型定理を確立した。また、半空間型の非有界領域において非圧縮条件を満たすベクトル場全体のなす空間を考察し、その基本的な数理構造を明らかにした。この結果はNavier-Stokes方程式の線形化方程式であるStokes方程式と線形熱方程式の関係について新たな知見を与えるものであり、これにより非圧縮性粘性流体の境界付近における局所構造と非局所構造の関係をより明確に捉えることができるようになった。また、半空間型の非有界領域におけるベクトル場に対し、あるエネルギー非有界な関数空間の設定のもとでHelmholtz分解が成り立つことを示した。この研究により、Helmholtz分解の成立とある楕円型作用素の積型の分解定理が密接に関っていることが明らかになった。この他、2次元有界領域における渦度方程式を数値的に考察し、既存の速度場と圧力場に対するNavier-Stokes方程式の数値解との比較研究を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2次元外部領域においてスケール臨界空間に属するNavier-Stokes方程式の解の時間大域挙動の分類に成功したことは当初の計画を超える大きな進展といえる。また、半空間型の非有界領域における非圧縮性流体の数理構造に対して様々な角度から新たな知見を与えることができた。その一つは2次元半空間における渦度場の境界条件の厳密な導出とリューヴィル型定理に関わる解構造との関係を明らかにした点である。また、いわゆるソレノイダルなベクトル場全体のなす空間の位相的・代数的な基本構造を明らかにすることで、Stokes方程式の解構造をより明確に与えるというアプローチを確立することができた。このようなアプローチは本研究課題に取り組み始めた当初には無かったアイデアであり、研究課題申請時の想定を超える進展により得られた成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
2次元外部領域において、スケール臨界空間に属するNavier-Stokes方程式の定常解の安定性は、対称性などの特殊な仮定を課さない限り未だ基本的に未解決な問題となっている。物理的に重要であり、かつ具体的な表示の知られている定常解の安定性を調べることは今後の大きな課題である。また、これまでの研究により半空間型の非有界領域における非圧縮条件を満たすベクトル場全体のなす空間の基本的な数理構造は明らかにされたが、この結果をNavier-Stokes方程式の解析に応用することは今後の重要な課題である。
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Research Products
(16 results)