2015 Fiscal Year Research-status Report
線形微分方程式の解の大域挙動とモノドロミ保存変形に関する研究
Project/Area Number |
25800082
|
Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
眞野 智行 琉球大学, 理学部, 准教授 (60378594)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | モノドロミ保存変形 / 有限鏡映群 / 有理関数近似 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き、本年度も大きく分けて2つのテーマについて研究を行った。1つ目はパデ近似などの有理関数近似を用いた線形微分方程式のシュレジンガー変換を構成するためのアルゴリズムと、そのモノドロミ保存変形への応用である。2つ目は多変数大久保型方程式の平坦構造とその複素鏡映群およびモノドロミ保存変形への応用である。 1つめのテーマは主に一橋大学の津田照久氏との共同研究である。本年度はエルミート・パデ近似を用いたシュレジンガー変換の構成を6型パンルヴェ方程式に応用し、タウ関数の行列式構造についての考察を行った。その結果は研究会「有理函数近似が繋ぐ可積分系・直交多項式・パンルヴェ方程式」において発表した。また一般の高階線形微分方程式のモノドロミ保存変形のタウ関数の行列式構造について津田照久氏・石川雅雄氏と共著論文を執筆中である。これらは高階方程式のモノドロミ保存変形の解の構造を一般的に記述しているという点で意義がある。 2つ目のテーマは加藤満生氏・関口次郎氏との共同研究である。前年度に得られた多変数大久保型方程式の平坦構造についていくつかの具体例について詳細に研究した。特にDubrovin-Mazzoccoによって得られた6型パンルヴェ方程式の代数解のポテンシャルの具体的な記述や複素鏡映群のポテンシャルベクトル場の記述は重要な結果である。これらの結果についていくつかの論文を執筆中である。またarxivに投稿したプレプリントに対してイタリアのLorenzoni-Arsieからコメントを受け取り我々の枠組みと彼らの導入したbi-flat F-manifoldとの関連が明らかになった。ここからさらに今後の進展が期待できる。また複素鏡映群と特異点の変形についての研究も行ったが、これについてはいくつかのことが分かったもののまだ途中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題の研究計画に従い概ね順調な成果が得られている。また発表した結果に対して、他の研究者から得られたコメントなどにより今後の進展が期待できる状況である。
|
Strategy for Future Research Activity |
1つ目のテーマについてはかなりまとまってきているので現在執筆中の論文を完成させて、その応用などについて考察したい。 2つ目のテーマについて、まずは複素鏡映群の平坦構造と特異点の変形理論との関係が重要な問題である。実鏡映群については比較的多くの研究によりかなり理解されていると言ってもよいが、複素鏡映群についてはほとんど何も分かっていない。かなり困難な研究ではあるがこれまでの研究でいくらかの手掛かりは見つかっているので、それを利用して進展させていきたい。 またイタリアのLorenzoni-Arsieからのコメントにより、我々の平坦構造の枠組みと彼らの導入したbi-flat F-manifoldとの関連が明らかになった。ただし現在ではこの対応は半単純な場合に限定されており、この対応を半単純でない場合に拡張することは興味深い問題である。これは5型および4型パンルヴェ方程式などの不確定特異点をもつモノドロミ保存変形に応用を持つことが期待される。必要に応じてLorenzoni-Arsieらと連絡を取りながら研究を進めたい。
|
Causes of Carryover |
参加しようと考えていた研究会にスケジュールの都合で参加できなかったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度行われる研究会に参加する。
|
Research Products
(8 results)