2016 Fiscal Year Research-status Report
周期的シュレディンガー作用素のスペクトラルギャップの解析
Project/Area Number |
25800085
|
Research Institution | Maebashi Institute of Technology |
Principal Investigator |
新國 裕昭 前橋工科大学, 工学部, 講師 (90609562)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | シュレディンガー方程式 / スペクトル理論 / 周期ポテンシャル / 量子グラフ / カーボンナノチューブ / バンド構造 / スペクトラルギャップ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は,研究課題「周期的シュレディンガー作用素のスペクトラルギャップの解析」の4年目に当たる。研究集会の開催時期の都合で本研究課題の実施期間延長をすることとなったが,当初の予定では本年度が最終年度であったため,当該研究課題において得られた研究成果を,最終年度の取りまとめとして口頭発表や数学誌への投稿を行ってきた。まず,口頭発表は,前年度に掲載受理がなされた「周期的に破損したカーボンナノチューブ上のシュレディンガー作用素のスペクトル理論の研究」に関して2回,また,「スーパーカーボンナノチューブ上のシュレディンガー作用素のスペクトル理論の研究」について,アメリカ合衆国で開催された「QMath13」を含めて3回行った。後者は,数学誌に既に投稿し,審査の過程にある。前者の論文については年度末に校正刷りの確認作業を行った。後者の研究は,2011年の理論化学者による論文で登場した,カルビン結合による影響でグラフェンよりも更に多くの炭素原子を含んだスーパーグラフェンと呼ばれる分子を円筒状に丸めて作られるスーパーカーボンナノチューブについて,対応するシュレディンガー作用素の量子グラフとして定式化し,そのスペクトルを解析したものである。得られた成果は,絶対連続スペクトルと多重度無限大の固有値からなるバンドギャップスペクトル構造となり,分子の伝導性に関わるスペクトラルギャップの存在/非存在問題に関連する結果を得た。通常,ポテンシャルの摂動はその存在/非存在にシビアに影響を与えるが,スーパーカーボンナノチューブの場合にはいかなる周期ポテンシャルによる摂動にも影響を受けないカルビン結合の強さを表す成果として現れた。研究課題遂行中に,6編の論文の数学誌への掲載および掲載受理と,さらに1編の論文投稿をすることができている状態である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要でも述べたが,本研究課題の遂行中に,(I)の「周期的一般点相互作用に従う1次元シュレディンガー作用素のスペクトルについての研究」と(II)の「Zigzag nanotube 上のシュレディンガー作用素のスペクトル理論についての研究」において,合計で6編の論文として数学誌において成果発表が行われ,さらに近年の理論化学者による様々な分子モデルの登場する動向を考慮して,スーパーカーボンナノチューブ上のシュレディンガー作用素のスペクトルについての研究成果が得られたため,本質的には当初の計画以上に進展していると言える。その研究成果のうち,カーボンナノチューブの精製過程や摩耗による欠損を考慮したシュレディンガー作用素の解析が,前年度末の日本数学会函数解析学分科会における特別講演の形での招待講演,更には材料系の研究集会からも分野横断的に講演依頼を受けていることは,当初の計画以上に進展したことを裏付けられるものと考えている。この「周期的に破損したカーボンナノチューブ上のシュレディンガー作用素のスペクトル理論の研究」は,非線形シュレディンガー作用素を扱うグループにも興味の対象となり,講演依頼を2016年前半に受けたが,2017年度に開催される研究集会であった。当該研究課題遂行中に得た研究成果を発表する都合上,本研究課題の実施期間を延長する形で参加をするのが適切であろうと判断し,そのような結果に至った。この点に関して(研究集会開催の期間の問題で)一部に遅れが生じたため,進捗状況はおおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究課題「周期的シュレディンガー作用素のスペクトラルギャップの解析」における成果発表の最終段階として,前年度に生じた残額である254,474円を使用して,東北大学の福泉麗佳先生,McMaster 大学のDmitry Pelinovsky 先生らが主催する研究集会「Nonlinear Partial Differential Equations on graph」(フランクフルト)に参加して口頭発表を行う。この研究集会は,グラフ上の非線形シュレディンガー方程式の研究の深化を目的とした研究集会であるため,線形方程式を扱う当該研究課題の最後に新たな見地を得て当該研究を終了することが可能であると期待できる。継続する研究課題の更なる発展のためにもしっかりと準備して行っていきたい。
|
Causes of Carryover |
当該研究課題において得られた研究成果について,2017年6月にドイツで行われる研究集会「Nonlinear partial Differential Equations」における招待講演を2016年4月に依頼を受けた。線形シュレディンガー方程式を扱う本研究課題内容によって,非線形シュレディンガー方程式を扱うグループからの講演依頼は,研究テーマを広げ新たな知見を得るための重要な機会であると考えられる。招待講演受諾の返信締め切りが2016年9月であったため,研究期間の延長の形を取って対応していくこととし,その計画のもとにドイツへの旅費を計画的に残すこととした。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究集会「Nonlinear partial Differential Equations」(ドイツ・フランクフルト主催)に参加する。
|