2014 Fiscal Year Annual Research Report
ウイルス感染動態中のタンパク質発現時間分布モデリングとデータ解析理論の構築
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25800092
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岩見 真吾 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (90518119)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 数理モデル / ウイルス感染 / 偏微分方程式 / 時間遅れを持つ微分方程式 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、ウイルス感染動態は、常微分方程式による記述が主流となっている。これらの数理モデルは、シンプルかつ汎用性に富んでいる事より、様々なウイルス感染症の理解を促進してきた。実際、従来の数理モデルは、対象とする実験データに量的制限がある場合には十分であった。しかし、近年、数種類の時系列データに加え、ある種“分布するデータ”の計測が可能になりつつある。「古典的で静的な統計解析」及び「集中定数システム(ODE)モデル」では、これら豊富なデータから真に重要な情報を抽出する事が困難になっている。本研究課題では、培養細胞を用いてHIV-1感染実験から得られる豊富なデータを十分に扱える分布定数システム(PDE)モデルの数学的枠組みを開発し、それらを用いたデータ解析理論を構築する事が目的であった。
宿主細胞内でウイルスが脱殻してから子孫ウイルスを複製するまでの間はウイルスを観測することができない。この期間は暗黒期と呼ばれる。現在まで暗黒期に関する数理モデル研究は複数報告されているが、暗黒期を定量的に扱った研究はほとんど存在しなかった。本研究では、SHIV侵入細胞がウイルスタンパク質を産生するまでの時間(すなわち、暗黒期)がどのように分布しているかを感染実験により調べた。推定の結果、暗黒期の分布はガンマ分布に従うことがわかった。さらに、時間遅れを持つ微分方程式を用いてこれらの暗黒期を詳細に記述する数理モデルを開発し、SHIV感染実験データを解析した。これらの結果と従来の結果を比較することで、暗黒期の分布がウイルスの基本再生産数の推定に大きく影響を及ぼすことを明らかにした。本研究で開発した融合的手法を用いることで今後より詳細なウイルス感染動態を定量化することが期待される。
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