Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究目的は, 円分強正則グラフに属さない有限体上の一般の強正則ケーリーグラフと歪アダマール差集合との関係について明らかにすることであった. この研究課題については, 既に昨年の私の研究およびChen-Feng(2014)によって, 部分的ではあるが肯定的な解決がなされた. また, 本年度は更なる進展として, 円分類が3種の指標値を持つ場合(円分強正則グラフの自然な一般化)の分類についても研究を行った. さらには, 強正則ケーリーグラフの一般化としての有限体上のトランスレーションスキームについて, 新たな構成法の提案・特徴づけを行った. これらの研究は, 円分強正則グラフの概念を一般化した枠組みの中で捉え直すことで, 本研究課題の一つであった円分強正則グラフの存在性を決定するという大きな問題の解決につながるという点で研究意義がある. 円分類が3種の指標値を持つ場合の分類問題に関しては, 部分的なクラスでSchmidt-White(2009)が与えた2種の指標値を持つ場合の結果の類似が得られ, Weighing行列というデザインとの新たな関係性も見出すことができた. この研究結果は現在国際学術誌に投稿中である. また, 有限体上のトランスレーションスキームについては, Chia-Kok(2006)が議論した4クラスの非対称アソシエーションスキームの例を無限個与えることに成功した. この結果は, Journal of Algebraic Combinatoricsという国際学術誌に掲載された. その他, Cameron-Liebler line classと呼ばれる幾何構造について, 新たな無限系列を構成し, その結果はJournal of Combinatorial Theory, Series Aという国際学術誌に掲載された. これらの結果については, 国内の4つの研究集会で講演を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的は, 円分型に限らない一般の強正則ケーリーグラフから出発し, 歪アダマール差集合の存在性を証明することであった. この目標については, 計画通り, 部分的ではあるが既に昨年度証明を行い, また, その一般化した結果がChen-Feng (2014)によって証明された. また, 円分強正則グラフを一般化した構造として, 円分類が3種の指標値を持つ場合の分類および有限体上のあるトランスレーションスキームの存在性の特徴づけを行うことに成功し, そのような観点から, 研究は順調に進展しているといえる. しかしながら, 私およびChen-Fengの結果に包含されない多数の歪アダマール差集合の例が計算機を用いて構成できているという点を鑑みて, 今後その更なる一般化を考えることができる可能性があり, 今後の進展が期待できる. また, 関連する問題として, Cameron-Liebler line classと呼ばれる有限幾何構造の存在性の問題があるが, 既存の研究結果として, その存在性はある特定のパラメータを持つ特別な有限体上の強正則グラフの存在性と同値であることが示されている. 今年度の研究成果の一つとして, 有限幾何的な視点ではなく指標論を用いた手法で, Cameron-Liebler line classの新たな無限系列を発見した. この問題は, これまで存在性が否定的に予想されてきた背景があるが, 私の今回の結果は無限個構成可能であることを示しており, 非常に大きなインパクトがある. また, この研究課題で扱ってきた研究手法がとても有効に応用できた例でもあり, 今後のこの研究手法の更なる改良・進展が期待される. さらには, 今年度, 関連した研究内容で3本の論文(査読有)が国際学術誌に出版されたという点も強調したい.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は, 円分強正則グラフの概念を一般化させ, その存在性について議論することで円分強正則グラフの特徴づけを試み, 概ね計画通りに研究が進んだ. 次年度は, その結果を利用した歪アダマール差集合の更なる構成法の提案を行う. また, 関連した問題として 有限体上のトランスレーションスキームの構成法の提案も同時に行う. まずは, 計算機を用いてできるだけ多くの例を与え, その構造を明らかにしておき, 続いて証明を試みる. また, 他の組合せ構造との関連を示しながら, 円分強正則グラフの特徴付けを行っていく. 次に, 当初の研究計画の通り, 歪アダマール差集合の同値性の新たな不変量の模索を行う. 昨年度に同値性の新たな不変量として素数を法とする三重交差数というものを提案し, Feng-Xiang(2012)が与えた歪アダマール差集合と古くから知られている平方剰余型差集合との非同値性を証明したが, 自然な問題として, 他の差集合との非同値性についての問題が生じる. よって, まずは, この素数を法とする三重交差数という不変量が他の差集合と平方剰余差集合との非同値性の証明に利用できるかを考察する. 続いて, 既存の歪アダマール差集合と平方剰余差集合との非同値性について, より一般的な不変量の開発を試みる. 特に, Ding-Wang-Xiang (2007)が与えた多項式型の歪アダマール差集合と相性の良い新たな不変量の模索を行う.
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