2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25800094
|
Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
高阪 史明 東海大学, 理学部, 准教授 (20434003)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | ヒルベルト空間 / バナッハ空間 / 測地的距離空間 / アダマール空間 / CAT(1)空間 / 凸関数 / 不動点 / 球面幾何 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、非線形写像の共通不動点の存在性および近似法の研究を行うとともに、上に有界な曲率を持つ完備な測地的距離空間における凸最小化問題と不動点問題の相互作用について研究した。 以下では、今年度に発表したそれぞれの論文の概要を述べる。 1. ヒルベルト空間において、二つの可換なハイブリッド写像の不動点を求める問題について研究を行った。2010年に青山-家本-高阪-高橋によって導入されたハイブリッド写像は非拡大写像の一般化で、閉凸集合の上への最短点射影や極大単調作用素のリゾルベントがその典型例である。この論文では、二つの可換なハイブリッド写像の共通不動点の存在定理を得るとともに、共通不動点への強収束定理と弱収束定理を得た。 2. 上に有界な曲率を持つ完備な測地的距離空間における凸最小化問題を不動点理論の立場から研究した。このような空間は、ヒルベルト空間の閉凸集合やヒルベルト空間の球面に球面距離を入れた距離空間の一般化である。1995年のJostや1998年のMayerの研究により、非正な曲率を持つ完備な測地的距離空間における凸関数のリゾルベントが導入され、調和写像や勾配流の研究などへの応用が議論された。今回の論文では、上に有界な曲率を持つ完備な測地的距離空間における凸関数に対し、正接関数と正弦関数の積を用いて定まるリゾルベントを導入し、それがwell definedであることを示した。さらに、そのようにして定まる凸関数のリゾルベントがヒルベルト空間におけるリゾルベントと類似した性質を持つことを示し、不動点の存在性と近似法の研究を行った。 3. バナッハ空間におけるfirmly nonexpansive-like写像の不動点近似法に関して最近得られた成果を解説した。この研究により、ヒルベルト空間における極大単調作用素に対する近接点法の収束定理のバナッハ空間への一般化の一つが得られた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度までの研究で考察した非線形写像について、非線形問題を研究する上での基本的な空間として知られるヒルベルト空間において、共通不動点の存在定理と共通不動点近似定理が得られるとともに、線形構造を持たない曲がった空間である測地的距離空間における非線形問題と不動点問題の相互作用の研究が進展し、次年度の研究を進める上での基礎が固まったため。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、これまでの研究において得られた非線形写像に対する不動点定理と不動点近似定理を基礎とし、凸最小化問題、二変数関数の鞍点問題、二変数関数の均衡問題などの非線形問題への応用を中心に研究する。特に、測地的距離空間における凸最小化問題と不動点理論の相互関係については、平成27年度の研究によって一定の成果が得られたため、これまで解くことが困難とされていた非線形空間における種々の非線形問題を解決できるのではないかと期待している。
|