2014 Fiscal Year Research-status Report
数理生物学に現れる差分方程式のLotka-Volterra方程式を用いた研究
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25800095
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
今 隆助 宮崎大学, 工学部, 准教授 (10345811)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | Lotka-Volterra方程式 / Leslieモデル / 一回繁殖型 / 差分方程式 / 分岐 / Liapunovの方法 |
Outline of Annual Research Achievements |
[1] 数理生物学で扱われる数理モデルの多くは,非線形の微分方程式や差分方程式で記述される.非線形差分方程式は一次元であっても複雑な振る舞いを示すため,同次元の非線形微分方程式と比べると,その解析は困難なことが多い.そのため,非線形差分方程式を同次元の非線形微分方程式によって近似することができれば,多くのことを解析的に調べることが可能となる.本研究では,1段1次の離散化によって得られる非線形差分方程式の平衡点の安定性が,元の微分方程式の平衡点の安定性と一致するための条件を,Liapunovの方法を用いて与えた.また,漸近安定な平衡点の吸引域が離散化パラメータに対して一様に存在することも示した.
[2] 一回繁殖型非線形Leslie行列モデルは,離散的な年齢構造をもつ個体群動態を記述する非線形差分方程式である.この非線形差分方程式はLeslie行列の基本再生産数が十分1に近い時,同次元のLotka-Volterra(微分)方程式で形式的に近似できることが知られている.本研究は,一回繁殖型非線形Leslie行列モデルは,近似によって出現するLotka-Volterra方程式の1段1次の離散化であることを明らかにした.また,[1]の結果を応用し,一回繁殖型非線形Leslie行列モデルの周期解の安定性を調べる一般的な方法を与えた.この方法により,周期昆虫などに見られる周期的な大発生が起こるための条件を与えることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の目標であった,結合Leslie行列モデルの正平衡点の大域漸近安定性を証明することはまだできていないが,その基盤となる定理を証明することができたので,このように評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
Leslie行列モデルのような個体群モデルの正平衡点が大域漸近安定であるためには,システムがパーマンネンスであることが必要である.そこで,1段1次の離散化によって,システムのパーマネンスが維持されるのかについて考えたい.また,こうした基礎的な理論を数理生物学に現れる非線形差分方程式に応用し,非線形差分方程式をそのまま解析した従来の研究では明らかにできなかった現象を解明することを目指す.
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Causes of Carryover |
学会への参加を次年度に延期したため,次年度使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初予定していた学会へ参加するために次年度使用額を用いる予定である.
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