2013 Fiscal Year Research-status Report
マルチグループ輻射流体計算によるAGNトーラスから降着円盤へのガス供給過程の解明
Project/Area Number |
25800100
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
行方 大輔 筑波大学, 計算科学研究センター, 研究員 (40610043)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 活動銀河核 / 活動銀河核トーラス / 星間ガス / 輻射流体力学 / 数値シミュレーション |
Research Abstract |
本研究は活動銀河核トーラスから銀河中心の巨大ブラックホールの降着円盤へのガス供給過程の解明を目指すものである。観測的及び理論的研究によれば、活動銀河核トーラスはクランピーな構造であることが示唆され、ガスクランプ同士の力学的な相互作用がトーラス内部での角運動量輸送に大きな役割を果たしていることが指摘されている。本年度は、これに関係して、強輻射場中のガス雲の進化や寿命の輻射場強度(電離パラメータ)および光学的厚み依存性を、光電離過程を考慮した3次元及び1次元輻射流体計算によって調べた。その結果、与えられた電離パラメータに応じて、ある光学的厚みの値が存在し、ガス雲の光学的厚みがその値より十分に小さければ光蒸発駆動型進化を示し、十分大きければ輻射圧駆動型進化を示すことがわかった。前者の場合、ガス雲は光蒸発流によって質量を失いながら、光蒸発流の反作用で駆動される衝撃波によって押しつぶされる。衝撃波速度はロケット効果のため加速される。後者の場合、光蒸発流はダストの働く輻射圧によって、被照射面近傍に閉じ込められることで効果的に働かず、単純に輻射圧駆動の衝撃波がガス雲を圧縮し重力崩壊させる進化を示す。いずれの進化型の場合においても、初期に十分な質量があればポスト衝撃波層で星形成が期待される。電離パラメータとガス雲の密度によって、ポスト衝撃波層の表面密度増加率が異なり、ポスト衝撃波層における重力不安定の起こり方に違いがあることを例証した。これは様々なタイプの星形成が起こる可能性を示唆している。ガス雲の寿命を決める衝撃波速度の電離パラメータおよび光学的厚み依存性を1次元輻射流体計算によって広く測定した。これらの内、3次元輻射流体計算による研究結果は現在論文投稿中で、1次元輻射流体計算による研究は追加の計算をいくつか行った後に論文投稿の予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
提出した研究計画では、本年度は間接光を考慮した3次元輻射流体計算によって強輻射場にさらされるガス雲内での星形成過程を具体的に明らかにする予定であった。しかし、ガス雲の寿命を幅広いパラメータについて明らかにしておくことがより重要と判断し、当初の計画には無かった1次元球対称および平行平板輻射流体計算コードの開発とそれを用いた研究を先に行うことに変更したために遅れた。特に、非常に光学的に厚いガス雲を扱う必要があったため、解適合格子法の機能を持った、photon-conservativeなスキームで実装する必要があり、時間を要した。開発した1次元計算コードは今後の研究にも非常に有用であることから、「やや遅れている」と判断した。当初の予定であった輻射流体計算コードへの間接光伝播は現在実装中であり、平成26年度前半には完了する見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の推進方策は以下の通りである。まず前年度に引き続き1次元輻射流体計算によるパラメータサーベイの計算を実施し、研究結果を論文として出版する。この計算の実行と並行して輻射流体計算コードへの間接光伝播の実装を行い、パラメータサーベイ完了後に、提出計画の課題(2)に着手する。具体的には、まず間接光伝播を考慮した1次元輻射流体計算コードを用いて、ポスト衝撃波層の物理状態や表面密度増加率の電離パラメータとガス密度への依存性の予備調査し、その後代表的な場合について3次元輻射流体計算を実施する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究費は当初の計画通り研究資料の購入や計算データ保存のためのHDD等に使用した。国立天文台計算機システムのファイルシステムの有効活用等により、7万円ほど余りが生じたが、これは次年度の計算機使用料に充てる。 次年度研究費、及び、前年度からの繰越金は、平成26年度7月に京都大学情報基盤センターに新しく導入される予定のCray XC30の計算機使用料に充てる。
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Research Products
(4 results)