2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25800113
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
藤代 尚文 京都産業大学, 神山天文台, 研究員 (60601789)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | フォトニクス / フォトニック結晶 / 赤外線天文学 / スペース天文学 / 補償光学 |
Research Abstract |
本研究の目標は、宇宙望遠鏡もしくは補償光学を有した地上望遠鏡の赤外線天体観測装置に組み込むことによって、望遠鏡口径で決まる回折限界を超える角度分解能が得られるようになる、フォトニック結晶スーパーレンズを実現することである。本年度は、フォトニック結晶スーパーレンズ、およびその実証実験系の設計を実施した。 1.複合型フォトニック結晶スーパーレンズの電磁場解析による設計 波長10ミクロンの赤外線を透過する複数の光学材料の2次元および3次元フォトニック結晶構造について、時間領域差分法(FDTD法)、および厳密結合波解析法(RCWA法)によって電磁場解析を実施した。その結果、偏光依存性の観点では、2次元構造よりも3次元構造が実用上有用であると判断した。続いて製造の観点から3次元フォトニック結晶の実現可能性を調査し、加工に2光子重合原理にもとづく3次元レーザーリソグラフィーを用いた、カルコゲナイド・ガラス製3次元フォトニック結晶ならば、実現可能性が高いと判断した。本加工方法を仮定した3次元フォトニック結晶構造の最適化を、電磁場解析により継続して実施中である。 2.望遠鏡シミュレータの光学系設計・試作 フォトニック結晶スーパーレンズを用いた赤外線天体撮像装置は、レンズやミラーなどの古典的な光学素子で構成された望遠鏡と組み合わせて使用し、その角度分解能を向上させるものである。そのため、本デバイスの実証試験のためには、既存技術で作られた望遠鏡光学系が必要であり、その設計を実施した。設計の結果、セレン化亜鉛製非球面レンズを用いれば収差を十分に抑えた光学系が実現可能であることが示され、光学素子と機構部品を調達して本光学系の構築を完了させた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初想定していたシリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素などの一般的な赤外線透過光学材料では、製造の観点から波長10ミクロン帯で機能する3次元フォトニック結晶を実現させることが困難であることがわかり、新たな光学材料および加工方法の探索に時間を要した。今回確認した、カルコゲナイド・ガラスに2光子重合原理による3次元レーザー・リソグラフィー加工で3次元フォトニック結晶を成形する方法が、波長10ミクロン帯で機能するフォトニック結晶スーパーレンズを実現する最も可能性が高い方法と判断し、この方法での最適解を探索中である。
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Strategy for Future Research Activity |
カルコゲナイド・ガラスに2光子重合原理による3次元レーザー・リソグラフィー加工で3次元フォトニック結晶を成形する製造方法を仮定し、波長10ミクロン帯で機能するフォトニック結晶スーパーレンズの電磁場解析による最適化を継続して実施する。収差補正が十分になされたスーパーレンズの設計解が得られた場合、上記製造方法によってスーパーレンズを実際に試作し、既に構築済みの望遠鏡シミュレータ光学系によって実証試験を行う。逆に、物質の誘電体を操作するフォトニック結晶の範囲では収差補正が十分に行えないことが示された場合、当初の研究計画にもとづき、物質の透磁率までを操作するメタマテリアルまで探索範囲を広げて、望遠鏡口径で決まる回折限界を超える角度分解能が得られるスーパーレンズの理論設計を実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
フォトニック結晶スーパーレンズ(交付申請書で170万円を計上)を調達するため。当初から、平成25年度物品費の繰り越し分を用いて平成26年度にフォトニック結晶スーパーレンズを調達する予定であったため、物品費の繰り越しは予定通りである。フォトニック結晶スーパーレンズ試作業者との打ち合わせ用に計上した国内旅費については、現段階ではメールでの打ち合わせで済んでいるため、来年度に繰り越すこととした。 カルコゲナイド・ガラス製3次元フォトニック結晶で十分収差が補正されたスーパーレンズを設計できた場合、本繰越金を用いて、2光子重合原理にもとづく3次元レーザー・リソグラフィー加工によってスーパーレンズの試作を実施する。
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