2014 Fiscal Year Annual Research Report
金属欠乏星の元素組成から探る、宇宙最初の10億年における天体形成
Project/Area Number |
25800115
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小宮 悠 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 研究員 (10455777)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 金属欠乏星 / 化学進化 / 初代星 / r過程元素 / 元素合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
銀河は、初期宇宙の小規模な銀河(原始矮小銀河)の合体により、階層的に形成されてきた考えられる。金属欠乏星は、形成初期の銀河で出来た星の生き残りなので、母体となった原始矮小銀河ごとに、元素組成も異なると考えられる。本研究では、これまで開発してきた階層的化学進化モデルを改良し、星や超新星からのフィードバックを取り入れることで、原始矮小銀河の進化のより現実的なあつかいを可能にした。これを用いて、金属欠乏星の組成を再現し、その起源を調べた結果、以下のようなことが明らかになった。 ① 観測的に、元素組成の違いが顕著にみられるのは、バリウムやユーロピウムといった、r過程で作られた元素である。これは、r過程元素が一部の超新星でしか作られないため、原始矮小銀河ごとの違いが大きくあらわれたものと考えられる。本研究では、9-10太陽質量の星の超新星爆発時にのみr過程元素が作られるとした場合に、原始矮小銀河ごとの進化の違いにより、観測された金属欠乏星の組成分布がよく再現できることを示した。 ② 金属欠乏星の中でも最も金属量の低い、極超金属欠乏星の組成の分布を調べた。極超金属欠乏星が、もともとは金属元素を全く持たない星(種族III星)であり、星間ガスの降着により表面組成が変化した星と考えることで、組成分布が再現できることを確認した。 ③ 原始矮小銀河は現在の銀河より低質量なため、種族III星の一部は原始矮小銀河から外に放出される可能性がある。放出された種族III星の数と理論モデルにより計算した結果、銀河系周辺100kpc程度に、数百から数千個が分布しているとの予測がえられた。これらの種族III星は、暗く数も少ないため、既存の観測装置では発見は困難であるが、次世代の装置を用いれば発見が期待できる。
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