2013 Fiscal Year Research-status Report
分散分光器とカロリメータを用いた超新星残骸のX線精密分光学の開拓
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25800119
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
勝田 哲 独立行政法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, 基礎科学特別研究員 (50611034)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | X線天文学 / 超新星残骸 / 精密分光 |
Research Abstract |
パピスA超新星残骸(SNR)中の爆発破片の観測データ解析を行った。この残骸は、爆発で飛び散った恒星破片と中心に残る中性子星の反跳が直接観測できる唯一の例であり、爆発メカニズム解明に極めて重要である。我々は爆発破片の3次元構造および破片の加熱メカニズムを探るべく、ニュートン衛星搭載のグレーティング分光器(RGS)により特に明るい破片構造を観測し、そのX精密分光を行った。 RGS は破片からの複数の輝線(ヘリウム様酸素のKα禁制線、Kα共鳴線、Kβ線、水素様酸素のKα線、及び、ヘリウム様ネオンのKα禁制線、Kα共鳴線など)を見事に分離した。全ての輝線は青方偏移を示し、その速度を 1500 ± 200 km/s と計測した。一方、輝線幅は狭く(< 0.9 eV at 654 eV)、酸素イオンの温度は 30 keV 以下にまで低いことを明らかにした。このイオン温度及び電子温度(0.8 keV)と電離パラメータ(2e10 cm-3 s)は、フォワードショック(V ~ 2000 km/s)よりもずっと遅い衝撃波(V ~ 600-1200 km/s)による加熱で説明できる。遅い衝撃波として考えられる有力候補はリバースショックである。本研究は、爆発破片がリバースショックで加熱されるというアイデア(40 年以上前から理論的に予想されていたが観測例に乏しかった)を裏付ける貴重な実例となった。我々は、この結果を査読論文として報告するとともに国内外の研究会で口頭発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、当該研究期間の直前に実施した観測データを速やかに解析し、論文及び研究会での発表を行ったため。
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Strategy for Future Research Activity |
アーカイブデータの解析を精力的に行うとともに、「ニュートン」衛星にさらなる観測を要求し新しいデータの獲得を目指す。具体的には、白鳥座ループ、ケプラー、MSH 15-52 など有名天体のアーカイブデータが存在する。また、観測提案する予定の天体には、RX J1713.7-3946 などを検討している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国際会議及び国内の研究者との研究打ち合わせを見合わせたため。 国内外の研究会、論文出版費、研究打ち合わせ、解析用パソコンと周辺機器の購入。
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Research Products
(4 results)