2013 Fiscal Year Research-status Report
超微粒子原子核乾板による方向感度を持った暗黒物質探索実験
Project/Area Number |
25800140
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中 竜大 名古屋大学, 高等研究院(現), 助教 (00608888)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 暗黒物質 / 原子核乾板 / 飛跡検出 |
Research Abstract |
本研究は、独自開発した超高分解能原子核乾板を用いた方向感度のある暗黒物質探索実験を目的にしたものであり、本課題において、実験立ち上げに向けた種々の技術開発を行ってきている。 開発の大きな柱として、検出器デバイスの感度コントロールと飛跡読み出しシステムの効率化とアップグレード、またバックグラウンドの理解についての研究が進められた。検出器デバイスにおいては、すでにサイズコントロールの手法は確立しているため、一定サイズをもつデバイスにおいて、感度低下の要因を追求することで、間接的な感度抑制原因として、再ハロゲン化と電子-正孔再結合が重要な役割を起こすことを特定し、それらを抑制するための感度コントロールを実現させることで、エネルギー阻止能の小さい電子に対しても、Bragg peak付近での100%の結晶感度を持たせることに成功した。 読み出しシステムとして、現在、光学顕微鏡、および高輝度光科学研究センター(SPring-8)で進めらているX線顕微鏡の開発も進められれ、光学顕微鏡に関しては、自動でサブミクロン飛跡選別可能なシステムの立ち上げ、および次世代高分解能顕微鏡システムの開発もスタートした。X線顕微鏡に関して、年間36シフトのマシンタイムを獲得することができ、撮像システムの半自動化および6keV+位相コントラスト法を実現することによる高コントラスト化を可能にした。 バックグラウンドに関して、特に、内部バックグラウンドである検出器内部の微量放射線同位体の測定をイタリア・グランサッソ研究所の研究者と、グランサッソ研究所にて共同で進め、現在の検出器内部に含まれる同位体分析をICPマススペクトロメータとGeスペクトロスコピーを用いて評価した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究において課題とされていたシステムがほぼ構築され、定量的なデータ取得が可能になってきたことにより、本研究の主目的である暗黒物質の方向検出における背景事象の研究を進めることが可能となった。また、検出デバイスにおいて、これまでの感度低下の要因が理解されはじめ、還元増感のような電子-正孔の再結合防止による著しい感度の向上が達成された。これらの一連の理解から、今後の背景事象低減を進めるのに朗報である。また、イオン注入装置を用いた角度分解能の測定手法も確立し、初めて検出対象の速度領域における事象の方向測定とそれに伴う角度分解能を定量的に評価できたことにより、我々の検出器が、方向感度を持った暗黒物質探索実験が原理的に可能であることを示すことができた。 上記、要素技術の開発と並行して、検出器内部における背景事象となりうる微量放射性同位体の測定を、イタリア・グランサッソ研究所と共同で進め、ICP-MSおよびGeスペクトロスコピーによる測定を行い、検出器内部における主要な放射性同位体の存在比率を定量的に知ることができた。またさらに、検出器内部におけるTh・Uからのα崩壊の観測からも、存在量の制限をつけ、異なる種々の測定間で無矛盾な結果を得ることができた。 当該年度における一連の開発および測定で、今後の要求性能に向けた開発における定量的な目標設定ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度、最も必要な課題は、実際のシグナルに対する検出効率の定量的な評価、および背景事象の混入率である。これらの結果を出すべく、下記の研究を進めていく。 まず、より精密なシミュレーションの構築を進めて行く。特に、我々のデバイスである超微粒子原子核乾板の構造、特に、ハロゲン化銀結晶の配列・サイズ分布を考慮した、より現実的な飛跡描像をシミュレーションの中で再現させることを目指す。これにより、暗黒物質および背景事象における分布も考慮した現実的な描像を示すことができ、実験感度のより精密な見積もりを行っていく。シミュレーションの較正は、イオン注入装置、および中性子を用いて行い、解析は、光学顕微鏡、さらに精密には電子顕微鏡を用いて行っていく。 デバイスの感度向上は引き続き行うが、感度上昇させる手法、また、そこでのメカニズムが理解されてきており、次は、よりエネルギー損失の小さい背景事象に対する検出感度を低減されるための電子トラップ導入による最適化を行う。これらの感度測定は、名古屋大学内にあるイオン注入装置が、特に低エネルギー側での加速レンジが広がったため、より低いエネルギー損失における検出感度を定量的に評価していく。 アクシデンタルなノイズは、現像プロセスなどにも依存している可能性がある。これは、まず現像における活性化エネルギーの変化とノイズの発生依存性を調べることにより、その発生要因を突き止めることを目指していく。 上記の開発・評価を進め、検出感度および背景事象頻度を定量化させ、まずはグラムスケールでの実験をスタートさせていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初、購入予定であった装置のデザイン・スペックの変更によって、当初の計画を延期したため。 基礎性能の評価をさらに進め、最適なデザインを検討したのち、次年度中に使用する。
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Research Products
(7 results)