2013 Fiscal Year Research-status Report
天体温度での炭素-ヘリウム核融合反応断面積の直接測定
Project/Area Number |
25800153
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
藤田 訓裕 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (60532364)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 原子核実験 / 天体核物理 |
Research Abstract |
太陽より8倍以上重い恒星では水素燃焼後にヘリウム燃焼が起こり、炭素と酸素が核融合によって合成されている。ヘリウム燃焼後の炭素と酸素の元素存在比は後の天体進化を予測するために非常に重要な値である。この比を実験的に求めるために天体温度近傍での炭素・ヘリウム核融合反応12C+4He→16O+gammaの反応速度(反応断面積)および天体S因子の測定実験を九州大学原子核実験室のタンデム加速器を用いて行った。 去年度は反応エネルギー1.2MeVでの実験を行った。加速器から得られる炭素ビームをヘリウムガス標的に衝突させ、酸素を生成させた。生成された酸素を反跳質量分析器を用いて炭素のバックグラウンドと分離した後、電離箱検出器および半導体検出器で測定した。 原子核標的であるヘリウムガスを封じ込めるための容器とビームが衝突する事で酸素のバックグラウンドが発生し、核融合反応で生成した酸素と同じエネルギーを持って検出器まで届いてしまっているという事が分ったので、これを除去するための対策を施した。容器表面を酸素の存在しない金で覆い、またビーム自体が容器と衝突しない様にビームサイズを制限するためのスリットを設置した。そうする事で、酸素バックグラウンドはほとんど除去する事が出来た。 バックグラウンド対策後に測定実験を行い、反応エネルギー1.2MeVでの反応断面積を求める事に成功した。これは現在、世界で最も低いエネルギーでの成功例であり、我々が世界トップのデータを取得したという事になる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最終目標は天体エネルギー近傍の0.7MeVでの測定であり、去年度は1.2MeVまでのエネルギーで測定に成功してた。この後、1.0, 0.8 MeVで測定を行っていく予定である。今後の測定に必要な事は加速器からのビーム電流を増強する事であるが、ビーム輸送系の改良による方法で解決できる目処は立っている。去年度までに問題であったバックグラウンド除去については、反跳質量分析装置の改良やヘリウム標的容器の改造で解決された為、後は計画通りに測定を行っていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、より低いエネルギーで反応速度の測定を行ってゆくが、反応確率が減少していくため、より強いビーム電流と高分解能なバックグラウンド除去が必要である。 炭素と酸素の飛行時間差を用いたバックグラウンド除去を行うための検出器を新たに導入する予定である。薄膜と粒子の衝突により発生する2次電子をマイクロチャネルプレートという増幅器を用いて衝突した時間情報を得る検出器で、基本的な設計と実機の製作はほぼ終了しており、性能テストを行った後使用予定である。 ビーム電流については、プリバンチャーというビーム粒子を時間的に収束させる装置をビームコースに組み込む事で増強する事が出来ると考えている。装置の開発と動作テストは終了しており、今後は効率を上げるための調整を行っていく。 以上の改造を行った後、反応エネルギー1.0MeV以下での測定を行う。
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