2014 Fiscal Year Research-status Report
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25800154
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
佐合 紀親 九州大学, 基幹教育院, 助教 (50540291)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ブラックホール摂動法 / 重力波 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ブラックホール摂動法を用いて、相対論的連星の運動とそれに伴う重力波放射について明らかにすることである。これを達成するためには、ブラックホール時空を運動する質点を考え、質点が引き起こす重力場摂動とそれに伴う重力的反作用力を導出する必要がある。 平成25年度は、本研究で採用する摂動計算手法「パンクチャー法」について、現状と課題点を検討した。重力場摂動を数値計算する際に、摂動の単極子成分と双極子成分に非物理的な線型成長モードが現れることが分かっており、これが重力場への拡張の大きな障害となっている。平成26年度は、重力場摂動計算において線型成長モードが卓越してしまう原因を探り、不完全な初期条件から生じる誤差が最大の要因であることを明らかにした。シュバルツシルト時空、円軌道の場合には、単極子成分の厳密な解が知られており、それを初期条件とした数値計算では、線型成長モードは抑えられて物理的な解が得られることを確認した。 平成25年度に引き続き、作用-角変数を用いたカー時空中の質点運動の定式化についての検討を行った。昨年度の研究では、この定式化において、適切なゲージ条件を課すことにより、運動方程式を相互作用ハミルトン関数の長時間平均を用いてで簡略化できる可能性を示した。しかし、このようなゲージの有無は自明ではない。平成26年度は、運動方程式を簡単化できるゲージの存在可能性について検討し、特殊な場合を除いてこの様なゲージが存在することを明かにした。 また、作用-角変数による定式化を利用した具体的計算に向けて、重力的反作用力の永年効果を解析的に導出した。軌道進化を計算するにあたり、重力波の散逸効果による永年変化は最も重要であり、その計算には高い数値精度が要求される。こうした計算の負担を軽減するために、永年変化の解析的公式は有効であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
摂動方程式を数値的に解く際に、単極子成分と双極子成分に非物理的な線型成長モードが現れる。これは、初期条件を正しくとることで低減させることができるが、一般の場合に初期条件を求めるのは容易ではない。そのために、重力場摂動への拡張が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 線型成長モードを低減する手法の検討 重力場摂動を精度良く計算するためには、単極子成分と双極子成分に現れる非物理的な線型成長モードを低減する必要がある。適切な初期条件を求めて成長モードを抑える手法について研究を進めるほか、成長モードが解として含まれないような摂動方程式の再定式化も検討する。 (2) 作用-角変数を用いた定式化の応用 これまでに、作用-角変数を用いてカー時空における質点運動の定式化を進めてきたが、これを基に具体的な計算を行うための数値コード化を検討する。また、共鳴軌道の取扱いや、二次精度摂動の定式化の議論を進める。
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Causes of Carryover |
平成26年度には数値計算用の計算機を購入したが、設置場所や電源確保の問題により購入時期に遅れが生じた。そのため、その計算機に導入予定であったソフトウェアの購入が平成26年度内にできなかったため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度に導入を予定していた数値計算用のソフトウェアの購入に当てる。
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Research Products
(1 results)