2013 Fiscal Year Research-status Report
変分法と流体力学を用いたブラックホール物理への新たなアプローチの実践
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25800157
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
宮本 雲平 秋田県立大学, 総合科学教育研究センター, 准教授 (70386621)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 一般相対論 / ブラックホール / 高次元時空 / 変分問題 / 微分幾何学 / 平均曲率一定面 / 流体力学 / 表面張力 |
Research Abstract |
本研究ではブラックホールの安定性と運動を,一般相対論の基礎方程式であるアインシュタイン方程式の直接積分ではなく,流体・重力対応(fluid/gravity correspondence)と呼ばれる双対性を用いて変分学・流体力学における問題に置き換えてから解析する.本研究の目的は,次の2つの課題をクリアーすることで,このアプローチの有用性を示すと同時に,ブラックホール物理学における未解決問題に決着を付けることである. ・課題(A):変分学における等周問題(isoperimetric problem)を解き,一般次元におけるカルーツァ・クライン(Kaluza-Klein)・ブラックホールの安定性を決定する. ・課題(B):表面張力で支えられた流体がピンチする(千切れる)ときの普遍的振舞いを導き,グレゴリー・ラフラメ不安定性(Gregory-Laflamme instability)によるブラックストリングのダイナミクスを明らかにする. 上記2つの課題課題(A)(B)をクリアーすることで,流体・重力対応によるブラックホールの性質を探る手法の有用性を示すと同時に,ブラックホール物理学における未解決問題(宇宙検閲官仮説・自己相似仮説・動的時空におけるブラックホール熱力学など)に関する重要な知見を得ることができる. 平成25年度に関しては,特に課題(A)に取り組んだが,予想以上の成果を出し,現在,高エネルギー物理学と微分幾何学の両分野において1本ずつの論文を執筆中であり,近日中に投稿予定である.また,国内外の研究機関における招待講演においてそれらの成果を発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
既述の課題(A)を解決するための具体的課題として「一次元がコンパクト化されたユークリッド空間において,与えられた体積の下で面積を極小にする超曲面は何か.」という問題に取り組んだ.この問題に関して,研究代表者は研究協力者である小磯深幸氏(九州大学教授)との共同研究を通して,全ての次元・全てのパラメータ領域において該当する超曲面を見つけ出し,安定性などに関して数学的証明を与えることに成功した.そして,その成果を発表するための論文を現在執筆中である.期間内に,全ての次元・パラメータ領域で該当する超曲面の安定性を決定できたことは,非常に意義深く,予想以上に次の研究に指針を与えるものとなっている.従って,当初の計画以上に進展していると考えてよいと思われる.
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Strategy for Future Research Activity |
まずは,上記「現在までの達成度」で述べた超曲面に関する論文執筆を終わらせ,学術誌への掲載を達成させたいと考えている.ここで得られた成果は数学的にも物理的にも意義があるため,両コミュニティに向けて広く発信したいと考えている.従って,1本の論文は数学的証明を隈無く記述した数学の論文,もう1本ではブラックホール物理学への応用に特化し,流体・重力対応の点から高次元ブラックホールの安定性に関して何が言えるのかを整理したいと考えている. 上記の論文投稿が終わり次第,課題(B)「表面張力で支えられた流体がピンチするときの普遍的振舞いを導き,グレゴリー・ラフラメ不安定性によるブラックストリングのダイナミクスを明らかにする.」に取り組みたい.まずは,解析的手法により自己相似解を探すなどし,行き詰まった場合には,数値的手法に頼ることも視野に入れ,進めていきたい.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
協力研究者(九州大学・小磯深幸氏)が研究打合せのため研究代表者(秋田県立大学・宮本雲平)の所属機関を訪れたが,日程調整が難しく,当初予定していたよりも滞在期間が短くなったため国内旅費に余剰が出たため. 研究打合せのため,26年度7~8月の適当な時期に宮本が九州大学を訪れ数日間滞在する予定であるが,その期間を可能な限り延長し,その為の予算として次年度使用額を使う予定である.
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Research Products
(7 results)