2013 Fiscal Year Research-status Report
ミュー粒子g-2/EDM精密測定実験のためのビームイオン源の開発
Project/Area Number |
25800164
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
深尾 祥紀 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 助教 (80443018)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | ミュー粒子 / 負ミューオニウム |
Research Abstract |
当該研究の目的は高強度の極冷ミュー粒子ビーム生成のためのビームイオン源の開発であり、J-PARCの低速ミュー粒子ビームを標的に入射することで負ミューオニウムを生成し、それを静電場で再加速させることを実証することが目標である。平成25年度では標的を設置するための真空チェンバー、生成された負ミューオニウムを加速させるための引き出し電極、測定のバックグラウンドを除去し、負ミューオニウムを識別するためのスペクトロメーター等の実験装置全体の設計を進め、スペクトロメーターに使用するMulti-Channel Plate(MCP)検出器の開発を進めた。実験装置全体の設計においては、過去に行われた研究結果をもとに、当初予定していたタングステン薄膜を用いた標的だけでなく、多様な標的(金属薄膜、アルカリ蒸着を施した金属薄膜、シリカエアロジェルなど)を用いた実験が可能となるように設計に改良を加えるように進めている。また、当該研究と並行して進められているミューオニウムをレーザー解離して極冷ミュー粒子ビームを生成するプロジェクトとも合わせて相乗効果が期待できるように装置の設計・開発を協力して行っている。MCP検出器は生成された負ミューオニウムを検出するため必須となる検出器であり、上記のいずれの標的を用いた実験においても利用可能である。生成された負ミューオニウムの空間分布・時間分布を測定するため、MCP検出器の読み出しを分割し、検出器に到達した負ミューオニウムの位置情報を検出できるように開発を進めている。既存のMCP検出器を利用したプロトタイプを用いて、基本的な性能評価を計測し、実機制作に対して必要となる改良項目を洗い出している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実験装置全体の設計に対して遅れが生じている。当該研究に使用する標的の候補としては、アルカリ金属蒸着を施したタングステン薄膜を想定しているが、J-PARC物質生命科学実験施設(MLF)において行われた同標的を用いたミューオニウム生成実験では、期待されていたミューオニウムの生成が検出できなかった。このことにより当該研究の検出対象である負ミューオニウムの生成に対しても安易な期待を持つことはできない状況となっている。一方、LAMPF研究所での先行研究では比較的高速のミュー粒子ビームを金属薄膜に入射することでミューオニウム及び負ミューオニウムの生成が確認されている。また、最近、カナダのTRIUMF研究所においてエアロジェル標的を用いた研究により、多量のミューオニウムの生成が確認されている。これらの状況から、当該研究においても多様な標的での実験が可能となるように実験装置の設計の変更が必要と考え、このことが主な研究の遅れとなっている。一方で、いずれの標的を利用する場合においても、生成された負ミューオニウムの検出にはMCP検出器を利用することになるため、その開発を進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
当面の実験において使用する標的を決定し、それをもとに引き続き実験装置全体の設計を進めていく。特に入射ミュー粒子ビームのエネルギーは生成される負ミューオニウムのエネルギーにも影響を及ぼすと思われ、負ミューオニウム再加速のための電極、負ミューオニウム識別のためのスペクトロメーターの設計にも影響を与える。これに対応するためシミュレーションを行い、最適な設計値を決定していく。また、スペクトロメーターに利用するMCP検出器の開発を引き続き進め、プロトタイプを用いた性能評価の結果をもとに、多様な状況に対応可能となるように汎用性の高い形で実機の仕様を決定する。決定した装置設計をもとに実験装置全体を製作し、今年度中のビーム実験を目標とする。一方、現状では負ミューオニウム生成が確実と認められる標的物質は存在しない。当該研究におけるビーム実験においてその正否を明らかにする一方、開発した実験装置は、並行して進められている他のプロジェクトにおいても可能な限り利用できるようにスペクトロメーターの設計などを工夫する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
先行または並行して進められている研究結果により、当初計画していたタングステン膜のみを使用する実験計画のみでは成果の確実性に欠けると判断し、シリカエアロジェルを含む多種の標的を利用し、また、多様な入射ミュー粒子ビームのエネルギーに対応できるように実験装置全体の設計に変更を加えたため、今年度での装置制作まで到達しなかったため。 当初の計画通り当該助成金は実験装置の製作費用として使用する。
|