2013 Fiscal Year Research-status Report
超弦理論におけるモジュライ場の現象論・宇宙論的側面の研究
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25800169
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
檜垣 徹太郎 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 研究員 (10629059)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 素粒子論 / 素粒子現象論 / 弦理論的現象論 |
Research Abstract |
今年度は、主に弦理論におけるアクシオンに注目しました。軽いアクシオンについては、暗黒物質としての物理や性質に注目しました。またBICEP2実験の原始重力波の検出報告があったことにより、重いアクシオンを使ったインフレーション模型の構築にも注目しました。同時に、BICEP2実験の示唆する、アクシオン暗黒物質に対するパラメータの制限も考えました。これらから、弦理論の模型構築に対する制限が得られる可能性があります。 軽いアクシオンは冷たい暗黒物質や熱い暗黒物質(暗黒輻射)となります。その物理や制限を考えました。暗黒輻射は、軽く冷たい暗黒物質アクシオンがあると弦理論のモジュライの崩壊から一般的に生成される事を示しました。またその暗黒輻射成分は初期宇宙には宇宙磁場と相互作用して光子が放出され、それが磁場の強さとそのアクシオン結合に対する観測制限になる事を議論しました。3.5keVのエネルギーをもったX線ラインが検出された可能性があったので、7keV質量のアクシオンの崩壊から作られた3.5keV X線シナリオも考えました。 また、重いアクシオンについて、インフレーションを起こすインフラトンの候補としての模型を考えました。これは重力波を出すインフレーション理論を制御するのに尤もらしいからです。これも観測と無矛盾に果たす事を示しましたが、微調整が必要でそれが弦理論模型の制限になる可能性がある事を示しました。一方、BICEP2のおかげで、軽いアクシオン暗黒物質について、非常にそのパラメータスペースが小さくなった事を示し、同時にそれを緩和する可能性を考えました。 最後に、平成25年度中には論文にはなりませんでしたが、宇宙におけるバリオン非対称性の起源や、ニュートリノ暗黒物質の可能性を議論して完成直前まで議論していた事を報告します。両内容とも、4月終わりにはプレプリント論文になりました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
弦理論のさまざまなアクシオンに注目し、有効理論を用いてその性質を調べる事について理解が深まったのが理由です。特に、BICEP2の実験結果により当初の計画より予想以上にインフレーションへの応用について進展がありました。また、バリオン非対称性の起源などの研究も当初の計画通り進みました。 一方、インフレーションが予想以上に進んだおかげで、他の弦理論における標準模型の構築については、あまり時間が取れませんでした。 それをトータルで見ると当初の予定より大幅に進んだ部分と相殺して予定通りと思っています。
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Strategy for Future Research Activity |
なによりもBICEP2実験の結果を踏まえたインフレーション模型の構築や、弦理論からの示唆を調べる事が最優先だと思います。当初の研究計画に多少の変更をしてもです。それは、この原始重力波の発見が本当だとすると世紀の大発見だからです。その時、インフレーションは弦理論に非常に近いエネルギースケールで起こっている事を意味し、弦理論を用いて議論する事が自然だからです。 この為には、弦理論的アクシオンを調べるのが尤もらしい方針の可能性があります。それはPlanck スケールを越えた場の値を制御できる可能性があるからです。弦理論においては全てのスケールはダイナミカルに現れます。その意味で、プランクスケールを超える値も同様です。これが特に、ゲージ対称性(シフト対称性)から導かれる、アクシオンのポテンシャルの平坦性と密接に結び付いています。 これを基にインフレーション模型やそこに隠れた背景を考えます。そして、それを導くような弦理論模型や、その時の制限を考えます。 そして、可能ならば、そこに暗黒物質の候補や、標準模型がどのようにインフレーションと結びついているか議論します。これはインフレーション後の宇宙の再加熱で、密接に結びつくので、議論できます。そこから、弦理論的な示唆をそれらのセクターについても考えます。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成26年度にノートPCや計算ソフトなど、円滑な研究遂行の為に大きな買い物をしたかったので余剰金を残しておきました。以上が理由です。 ノートPC、ソフトの金額の大きな買い物をします。これは円滑な研究遂行のためです。まだ余剰金があるのならば、外国、国内の出張を行い研究遂行の為に理解を深め、論文執筆の準備をします。
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