2014 Fiscal Year Research-status Report
格子QCD計算から導かれる相互作用によるエキゾチック・ハドロンの構造の研究
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25800170
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
池田 陽一 独立行政法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, 特別研究員 (90548893)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ハドロン物理 / 格子QCD / エキゾチックハドロン / チャーモニウム |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、格子QCD計算によりチャンネル結合系のポテンシャルの導出をめざし、特にBESIIIやBelleといった実験施設で発見されたとされるZc(3900)のチャンネルでの計算を行なった。Zc(3900)の構造に関する理論研究は現在のところ模型によるものだけで、しかも基本となる相互作用の情報が全くと言ってよいほど無い。本研究では、第一原理計算を元にその相互作用を明らかにできるため、Zc(3900)の構造に関してより深い知見を得ることが可能になると期待される。 本研究では、Zc(3900)のスピン・パリティ1+であるときに結合できるチャンネルであるpi-J/psi、rho-eta_c、Dbar-D*を取り入れ結合チャンネル系での波動関数を格子QCDシミュレーションにより得た。また、この波動関数からチャンネル結合ポテンシャルを計算し、Zc(3900)の構造の解析へ適応した。 本研究で得られた結果から、Zc(3900)はpi-J/psi、rho-eta_c、Dbar-D*のどれかから単純に作られるようなものではないことが理解された。一方、Zc(3900)の構造を理解する上で非常に重要となるのが、pi-J/psiとDbar-D*のチャンネル間の相互作用であることが分かった。さらに我々の得たpi-J/psiとrho-eta_cのチャンネル間相互作用は重クォーク対称性から理解されるように非常に小さいものであった。これらの結果は、有効模型などを構築する際に非常に重要な情報を与えるものであった。 また、我々の得た格子QCDの相互作用を用いて、数値的な仮想実験とも言えるpi-J/psiの散乱を考えた。その結果、実験で見られるようなピークがpi-J/psiの断面積に現れることが理解された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度チャンネル結合系のポテンシャルを導出するための格子QCD計算のコード開発が進み、さらにZc(3900)というハドロン・スペクトルの分野で現在ホットトピックとなっている粒子の構造解明に第一原理計算からの貢献を行なうことができた。また、数値的な仮想実験とも言える散乱実験を我々の得たポテンシャルによって行なった結果、BESIIIやBELLEなどの実験から得られたものに大変類似する結果を得た。このような、実験と相補的である第一原理計算を駆使した数値的実験に関しては、本研究を始める当初予定していた計画よりずいぶんと進んでいる。一方、実験結果を再現するようなハドロンの生成反応計算、少数系ハドロン構造計算に関しては当初の計画より少し遅れている。これらを行なう計算コード開発を早急に行ないうことは不可欠である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、実験結果を再現するようなハドロンの生成反応計算に関するコード開発をすすめ、実際にZc(3900)の場合に適用する。また、D中間子など、重たいクォークを含んだ、エキゾチックな原子核の束縛・共鳴状態の構造を調べるための構造計算コード開発を行い、先の生成反応の計算と合体させることで、第一原理計算から予言される未発見エキゾチック原子核の可能性を実験に提案していき、ハドロンや原子核の構造・生成に関する研究の新しい手法の確率を目指す。 また、現在までは非物理的質量を持つクォークを取り扱ってきているが、現実クォーク質量での格子QCD計算も進めていき、これらの結果も合わせて本研究の総まとめに取りかかる。
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Causes of Carryover |
本年度の研究成果に関しての発表の依頼が想像より多かったため、前倒し請求を行ない発表にかかる旅費に当てた。一方で招待講演が多かったため、交通費や滞在費に関して先方から負担してもらえたため差額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
これまでの研究で得られた計算結果のデータが膨大となってきているため、データのバックアップ用のPC周辺機器等に当てるのと、研究会への参加並びに研究成果発表にかかる旅費に使用する。
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