2013 Fiscal Year Research-status Report
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25800171
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Japan Aerospace Exploration Agency |
Principal Investigator |
川原田 円 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 開発員 (50462677)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | X線宇宙物理学 / 銀河団 |
Research Abstract |
本年度は、ASTRO-H衛星搭載硬X線イメージャー(HXI)の開発と、衝突銀河団に関する研究を前進させることができた。 HXIは、本年度中に、2式あるフライト品のうち、1式を完成させた。もう1式も現在製造中である。とくに私は、HXI用の高圧電源の開発を担当した。高圧電源はヨーロッパ宇宙機関(ESA)と協力して、イタリアの会社に特注して開発したものであるが、ポッティング方法の不備により放電が起こってしまうなど、大小さまざまなトラブルを現地まで行って解決し、正常に動作する信頼性の高いフライト品の高圧電源を完成させた。 銀河団については、銀河団外縁部の温度やエントロピーについて、Abell 1835 (Ichikawa et al. 2013) について、Abell 1689 (Kawaharada et al. 2010)と同様に非対称性が見られ、銀河団ガスは外縁部で静水圧平衡にはないことがわかった。また、「すざく」で観測した62個の銀河団について、銀河団ガス中に含まれる鉄とシリコンの量について調べたところ (Shimoda et al. 2013; 下田博士論文)、鉄の量は、主に銀河団同士が衝突したときに増加し、すでに力学的に緩和している銀河団では、ほとんど変化しないことがわかった。シリコンの量は、銀河団形成期や銀河団衝突のときに増加するが、小さな銀河団では、できたシリコンの一部が銀河団の外に逃げてしまうことがわかった。このシリコンに関する結論は、すでに「あすか」の時代に指摘されていたが(Fukazawa et al. 1998)、それを「すざく」で確認し、さらに鉄に関する新たな知見を得ることができた。このような研究は、重元素をプローブとすることで、銀河団がいつ、どれくらい衝突したのかについて調べることができるようになったという点で、本研究の目的にとって非常に重要な成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、ASTRO-Hの機器開発という点では、衛星搭載のフライト品を、若干の遅延やトラブルはありつつも開発できているので、ほぼ順調に進展していると言えよう。銀河団の研究については、Abell 1835 の研究と、重元素をプロープとした進化の研究が進んだものの、所期の計画よりは少し遅れている。ただし現在、有名な衝突銀河団である弾丸銀河団(Bullet cluster)について、「すざく」のデータから、外縁部のガスの温度やエントロピーの解析を進めており、空間的な非対称性など、興味深い結果が得られつつある。以上を総合的に勘案すると、研究の進展は「おおむね順調」が妥当なところと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、ASTRO-Hの開発の点では、衛星搭載のフライト品をすべて完成し、必要な環境試験や較正試験を行ったうえで衛星を完成させる非常に大切な年である。とくに年度の前半は、HXI などの観測機器の完成と試験のための山場であり、ほとんどの時間をそこに割くことになろう。私は高圧電源のほかにも、ESAと協力して開発している、X線マイクロカロリメータ(SXS)用のループヒートパイプの開発にも携わっており、ヨーロッパ側と密にコンタクトをとりながら開発を進めていきたい。 銀河団研究については、現在進行している、「すざく」の弾丸銀河団のデータ解析を進めて、論文にまとめたい。これが、今後その他の衝突銀河団を系統的に研究していくための重要なベンチマークになると考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費として予定していた物のうち、一部が予定より低価格で調達できたため、差額が 2,543円だけ生じた。この金額を年度内に無理に使うよりは、次年度の経費として使用したほうが有効に利用できると判断した。 次年度分に、物品費として使用する計画である。次年度請求分の直接経費700,000円に対して 2,543円が占める割合は小さいので、次年度の経費の使用計画に変更はない。
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Research Products
(10 results)
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[Journal Article] Suzaku Observations of the Outskirts of A1835: Deviation from Hydrostatic Equilibrium2013
Author(s)
Ichikawa, Kazuya; Matsushita, Kyoko; Okabe, Nobuhiro; Sato, Kosuke; Zhang, Y.-Y.; Finoguenov, A.; Fujita, Yutaka; Fukazawa, Yasushi; Kawaharada, Madoka; Nakazawa, Kazuhiro; Ohashi, Takaya; Ota, Naomi; Takizawa, Motokazu; Tamura, Takayuki; Umetsu, Keiichi
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Journal Title
The Astrophysical Journal
Volume: 766
Pages: 90-1, 90-19
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Probing of the Interactions between the Hot Plasmas and Galaxies in Clusters from z = 0.1 to 0.92013
Author(s)
Gu, Liyi; Gandhi, Poshak; Inada, Naohisa; Kawaharada, Madoka; Kodama, Tadayuki; Konami, Saori; Nakazawa, Kazuhiro; Shimasaku, Kazuhiro; Xu, Haiguang; Makishima, Kazuo
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Journal Title
The Astrophysical Journal
Volume: 767
Pages: 157-1, 157-30
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Search for galaxy-ICM interaction in rich clusters of galaxies2013
Author(s)
Gu, L.; Gandhi, P.; Inada, N.; Kawaharada, M.; Kodama, T.; Konami, S.; Nakazawa, K.; Shimasaku, K.; Xu, Haiguang; Makishima, K.
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Journal Title
Astronomische Nachrichten
Volume: 334
Pages: 453, 457
DOI
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[Journal Article] Hardening and Termination of Long-Duration γ Rays Detected Prior to Lightning2013
Author(s)
Tsuchiya, H.; Enoto, T.; Iwata, K.; Yamada, S.; Yuasa, T.; Kitaguchi, T.; Kawaharada, M.; Nakazawa, K.; Kokubun, M.; Kato, H.; Okano, M.; Tamagawa, T.; Makishima, K.
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Journal Title
Physical Review Letters
Volume: 111
Pages: 015001
DOI
Peer Reviewed
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